日鋼記念病院と市立室蘭総合病院が、互いの機能を補完した連携協力を進めることで、妊産婦の脳血管障害や交通事故など、各分野の産科救急を支える体制づくりを模索している。妊産婦の脳血管障害は1000人に1人単位のレアケースといわれるが、既に両院医師が連携し対応・成功したケースも出ており、今後の産科救急の充実化が期待されている。
脳内出血を起こした都内の主婦が8病院に受け入れを拒否され、出産後に死亡した問題が全国に波紋を広げている。
これを受け、室蘭地方では今年4月、休止していた日鋼病院の産婦人科と、NICU(新生児集中治療室)を有する地域周産期母子医療センターが、市立病院からの太田雄子医師の派遣と新たな医師2人の確保で再開。正常分べん、切迫早産や合併症などハイリスク分べんともに順調な復活を遂げている。
しかし、同院には脳神経外科の常勤はおらず、脳神経外科医3人を抱える市立病院は逆に産婦人科医が常駐していないのが現状。今回のような産科以外の疾患を伴うケースに対して、同地方の産科救急の手薄さがあらためて浮き彫りとなった。
現状打開に向け、市立病院産婦人科副部長、日鋼病院産婦人科科長と二足のわらじをはく太田雄子医師が中心となり、両院の連携に向けた各診療科医師らのコンセンサスを固めている。
具体的には、脳血管障害や交通事故などによる多発外傷の妊産婦の搬送先の決定や、搬送後の脳外科医など他診療科の治療タイミング、緊急分べん、母体・胎児の再搬送などさまざまな判断を協力して行う体制という。
この体制が動き始めたばかりの11月、実際に室蘭市内の病院で意識不明に陥った妊婦を市立、日鋼、市立―と、病院連携の下で対応したケースも生まれている。
太田医師は「システム構築という形だけのものではない。とにかく目の前に救急搬送された患者を救うための窮余の策だが、この地域の産科救急には必要」と、期待を込めて語っている。 (竹浪恒一郎)
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