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2008年12月11日

◎厳しさ増す就職戦線 人材を得る好機と前向きに

 雇用情勢が厳しさを増す中、二〇一〇年春卒業予定の学生の就職活動が動き出し、北陸 でも合同会社説明会が開かれている。「売り手市場」と言われた学卒者の就職戦線は、急速な景気悪化に伴う企業の採用手控えで一転、「就職氷河期」の再来が心配される状況にあり、学生らは危機感を募らせている。

 石川、富山県とも有効求人倍率が一倍を割っており、来春卒業予定者の採用内定の取り 消しが出るほど労働市場は悪化している。しかし、こうした状況は首都圏などの大企業に人材を奪われ、思うような採用ができずにきた地方の中堅、中小企業にとって、優秀な人材を獲得する好機到来ともいえる。地域企業はやみくもに採用を手控えるのではなく、前向きの人材戦略が望まれる。

 産業人材の確保に力を入れている県や市町村にとっても、Uターンを促進するチャンス である。石川県は年末に、能登北部の企業に絞った就職フェアを初めて開催する予定であるが、行政として県外に流出した学生の呼び戻し策をさらに検討してもらいたい。

 一〇年卒の大学生・大学院生の採用に関する民間調査では、〇九年より採用を「減らす 」と回答した企業が16%近くあり、前年より二倍以上増えている。逆に「増やす」と答えた企業は約18%から8%に減り、「変わらない」は50%、「分からない」は25%という状況である。

 バブル崩壊後の一九九〇年代前半から約十年間、大方の企業は新卒採用を控えた。その 結果、社員の年齢構成のバランスが崩れ、社内の高齢化に悩まされた企業が多い。そうした教訓があるため、採用減の回答企業が10%台にとどまったとみることもできる。北陸の企業では、採用に慎重な企業と意欲的な企業の二極化の傾向がうかがえるという。

 今後の景気次第で雇用環境のさらなる悪化が心配されるが、かつての就職氷河期のもう 一つの教訓は、景気低迷期での積極的な人材採用で成長した企業が少なくないということである。不況時こそ企業の新たな成長戦略を立てるときであり、新卒採用で積極性を失わないでほしい。

◎日本と6カ国協議 急ぐより確実な検証を

 北朝鮮が申告した核計画の検証をめぐって六カ国協議が難航している。米ブッシュ政権 は残る任期が少ないことから成果を焦り、対する北朝鮮はオバマ次期政権が事実上の相手だと割り切って米国の提案を拒み続けているのが主たる原因だ。

 北朝鮮が出した核計画についての検証は、六カ国協議のスケジュールの第二段階の作業 であり、最終段階になるであろうといわれる第三段階を規定する大事なものだ。それだけに妥協がなったとしても重要な部分は先送りされ、場合によっては米朝間で仕切り直しということもあり得る。

 日本は韓国とともに米国を支持しているが、以下の三点から急ぐよりも腰を据えて北朝 鮮を核断念に追い込むため確実な検証方法を求めたい。

 第一に、米国は検証の枠組みの文章化を求めているが、北朝鮮は文章化とともにサンプ ル採取を拒否しているため、妥協が成立しても中身があいまいになる懸念がある。第二に、北朝鮮の金正日総書記の病気説が飛び交い、様子がよく分からないのだから、病気説も含めて北朝鮮の今後を冷静に分析して対応することの方がより優先すべき課題となったのである。第三に、北朝鮮は核開発をあきらめていないと解すべき根拠に事欠かないのである。

 ただし、拉致問題で北朝鮮が誠意ある行動を取り、何らかの進展があれば、話が違って くるのは当然である。

 米朝間の対立は、七月の六カ国協議の首席代表会合で合意した検証方法についての受け 取り方の違いともいえるものだ。あのときは検証について▽核施設への立ち入り▽北朝鮮の技術者に対する聞き取り▽サンプルの検査―の三原則で合意したといわれた。

 米国がサンプル採取を含めた文章化を求め、北朝鮮はそこまで合意していないと文書化 に反対しているのは、こうした合意後の米朝のやり取りからすると、合意した時点ですでに内容の受け取り方に相違があったようだ。面白くはないが、ブッシュ政権の焦りからくる甘さというしかない。


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