解雇・失業の衝撃波が非正規労働者だけでなく正社員の間にも広がってきた。政府は新たに雇用対策を決めたが今後の失業者急増には力不足だ。景気対策と一体となった強力な雇用対策を急げ。
世界企業ソニーが二〇〇九年度末までに正社員八千人を含む一万六千人以上を削減すると発表した。これまで産業界では非正規労働者の削減が中心だった。解雇に聖域なし。ソニー・ショックの波及は必至だ。
労働者側も黙ってはいない。派遣社員などの反乱が始まった。
いすゞ自動車藤沢工場(神奈川県)の期間従業員三人は今月二十六日での契約打ち切り通告に対して解雇予告の効力停止を求める仮処分を横浜地裁に申し立てた。
日産ディーゼル工業(埼玉県上尾市)でも派遣社員三人が労働組合を結成。十八日での契約打ち切りの撤回を求める行動に出た。
非正規労働者は失業と同時に住む部屋も失うケースがあるだけに年末を控え時間との競争だ。追加雇用対策は緊急性が高かった。
だが麻生太郎首相の指示の下、政府が九日まとめた新たな雇用対策をみると期待外れが目立つ。
まず、対策の多くが本年度第二次補正予算案と来年度予算案の成立を前提としていることだ。実施のスピードが遅すぎる。
非正規労働者の住宅確保を年内に実施したり出向や休業などで雇用を維持する雇用調整助成金の対象とすること、派遣先企業が派遣労働者を直接雇用する場合、中小企業なら一人当たり百万円を支給するなどはいいが、絵に描いたもちになってしまう恐れがある。
肝心な財源の確保が不透明だ。三年間で二兆円を投入するが雇用保険の雇用安定資金一兆円は当然としても、残る一兆円のうち千五百億円は本年度二次補正、残りは来年度以降の予算という。先送りして予算を確保できるのか。
公明党の太田昭宏代表は十日、麻生首相に対して今後二年間で十兆円規模の経済対策を要請した。大事なことは見かけの規模ではなく財政・税制・金融を駆使した景気対策と、手厚い失業給付や再就職支援などきめ細かな雇用対策をタイミングよく実施することである。
企業は雇用の維持に真剣に取り組んでほしい。正規も非正規も同じ職場で働く従業員である。このままでは失業者が急増し、社会不安を招きかねない。雇用は企業の社会的責任の柱であることを、経営者はもう一度確認すべきだ。
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