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【主張】ソニー人員削減 雇用安定に官民で知恵を
ソニーが主力のエレクトロニクス事業の従業員を世界全体で1万6000人削減する大規模なリストラ策を発表した。
雇用削減の波は自動車業界、電機・精密機械業界から産業全体に拡大しそうな情勢である。今後、「あのソニーも雇用調整に動いたのだから」と人員削減を決断する企業が相次げば、日本経済の悪化に拍車を掛けることになる。リストラの連鎖を止めるための有効な雇用対策が急務である。
ソニーがリストラ決断の理由に挙げたのは、米国発金融危機に伴う世界経済の悪化と急激な円高に伴う販売減だ。米国や欧州だけでなく、中国などの新興国も景気が悪くなっているため、将来の収益悪化に備えて財務に余力がある間に早めにリストラしようという経営判断であろう。
ほかのグローバル企業も、リーマン・ブラザーズが9月に破綻(はたん)して金融危機が深刻化して以降、早期のリストラに動き出している。だが、減産と同時に解雇というリストラの動きの広がりはあまりにも急すぎないか。
雇用が不安になれば、消費が減って景気は悪化する。それが、倒産や失業を一段と深刻にするという悪循環の流れを企業自らが加速させてしまう。企業にはできる限り、雇用維持に努力してもらいたい。例えば、社内で仕事を分かち合うワークシェアリングの工夫があってもいいだろう。
そうした企業の努力を後押ししつつ、雇用の安全網を張るのが政府の役割である。
企業の雇用削減の動きを受けて、与党は今後3年で2兆円規模の新たな雇用対策事業を打ち出した。政府は緊急雇用対策本部を厚労省内に設置して、可能な対策からすぐに実施に移すという。
失業によって社員寮から出て行かざるを得なくなった場合に、雇用促進住宅への一時入居などの措置を講じる対策は早急に実施してもらいたい。失業給付の条件を緩和するなどの措置も急務だ。
ただ、政府の雇用対策の中には実効性に疑問符が付く事業も少なくない。都道府県への交付金を財源として、自治体が失業者らを臨時に雇う緊急事業が、選挙目当てのバラマキで終わるようなことがあってはなるまい。
雇用維持は社会の安心と安全に欠かせない。ここは官民挙げて、冷静に雇用の安定に向けて知恵を絞る時である。