ハンセン病患者であることを理由に、殺人を犯したとされた男性が偏見に満ちた裁判で、無実を訴えながらも死刑になった事件を題材にした映画「新・あつい壁」の上映会が8日、長野市勤労者女性会館しなのきであった。上映後、中山節夫監督が講演し、差別と偏見が残る社会の在り方を問い直すことの大切さを訴えた。
講演で中山監督は「(50年代半ばに)ハンセン病が治るようになり、世界が(患者の)隔離政策をやめ始めたのに、日本は続けた。ヒトラーのアウシュビッツと変わらない(種の)断絶」と批判。映画作りの中で取材した元書記官が「裁判官も検察官も国選弁護人も私も裁判を早く終わらせ、病から逃げ出したかった。男性を“断頭台”に送った1人」と告白したことに触れて「一番怖いのは一般市民の差別。差別について考える映画をつくりたかった」と語った。【福田智沙】
毎日新聞 2008年12月10日 地方版