厚生労働省が「原則禁止」としている病気腎移植を巡り、愛媛県などの腎不全患者ら7人が10日、厚労省の判断を導き、生存権や治療の選択権を侵害されたとして、日本移植学会の幹部ら5人に、計6050万円の損害賠償などを求める訴訟を松山地裁に起こした。国家賠償請求訴訟も準備している。
原告は、愛媛、香川、広島、岐阜の4県の腎移植患者3人と人工透析患者4人。
訴状などによると、同学会幹部らは、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(68)らが実施した42件の病気腎移植について、07年に非難声明を発表。これを受け厚労省が臓器移植法の運用指針を改正し、病気腎移植を「医学的妥当性がない」と禁止したなどとしている。原告側は、腎がん患者らから移植した腎臓でがんが転移した例はないなどと訴えている。
提訴後に記者会見した野村正良・原告団長(59)は「修復腎(病気腎)移植を正当に評価し、移植を望む患者にチャンスが広がるような環境づくりをしてほしい」と訴えた。
一方、被告の一人で、声明当時、同学会理事長だった田中紘一・先端医療振興財団先端医療センター長は「学会としてはデータなどあらゆる検証をして声明を出した」と話している。【加藤小夜】
毎日新聞 2008年12月10日 19時53分(最終更新 12月10日 20時11分)