ジュネーブ――世界保健機関(WHO)は9日、インドネシアの首都ジャカルタ東部に住む2歳女児が高病原性鳥インフルエンザの感染で死亡したと報告した。これで同国での犠牲者数は113人となった。世界最多の犠牲者。感染者の総数は139人となった。
女児は11月18日に発症、11日後に死亡した。詳しい感染経路を調べているが、鳥類の市場を訪れたことが判明している。WHOによると、スマトラ島中部のリアウ州でも9歳少女の感染が分かったが、その後、回復、退院したという。
インドネシア保健省は11月12日、ジャワ島中部スマランで入院中だった15歳少女が高病原性鳥インフルエンザの感染で死亡したと報告し、犠牲者数は113人としていた。しかし、スパリ保健相は翌日、鳥インフルエンザの感染が死因であることを否定していた。
保健相は今年6月、鳥インフルエンザ感染の犠牲者の発生を即座に発表せず、半年ごとに公表するとの方針を示していた。同国のイメージ悪化を防ぐための措置とし、代わりに政府対策の成果などを前面に出すとしていた。この方針に世界保健機関(WHO)などは迅速な対応が遅れると反発している。
同国で112人目の犠牲者が発表されたのは今年8月4日だった。保健相は過去に、インドネシアが供与した鳥インフルエンザに関するデータを使った薬剤が高価格で、経済発展途上国に十分行き渡らないことに不満を表明、データ提供を拒否したことがある。
鳥インフルエンザ感染は2003年以降、アジア中心に一気に拡大した。他国では対応策の徹底で感染に一応歯止めが掛かっているが、インドネシアでは逆に増加傾向にあり、WHOなどが包括的な対策の実施を求めている。
インドネシア政府はジャカルタでの家禽類飼育の規制を一応打ち出しているが、罰則規定が不備で徹底していないとの批判も出ている。鶏が貴重なたんぱく源となっている背景もあり、住宅地から鳥類を完全に閉め出すことが難しい状況にもある。