国の出先機関の統廃合を求める勧告が出た。既得権を死守したい官僚の抵抗で迫力を欠いた面は否めないが、分権のコマはとりあえず一歩進んだ。失速する麻生政権のもとで断行できるだろうか。
政府の地方分権改革推進委員会が統廃合案などを盛り込んだ二次勧告を麻生太郎首相に提出した。
対象とした国の出先機関は八府省十五機関に上る。職員約九万六千人、予算規模で約十兆円の大所帯だが、自治体と同じような業務が多い「二重行政」の弊害が指摘されており、住民からは実態の見えにくい組織でもあった。そこで事務・権限の廃止や地方への移譲を各府省に要求。必要性のない出先は原則廃止し、人材や財源を地方に移すのが基本路線だった。
勧告はいまひとつパンチに欠ける内容だ。検討した約四百の事務・権限のうち、地方移譲、廃止などを提言できたのは百十六にとどまり、完全廃止は中央労働委員会地方事務所の一機関のみ。今回の改革の本丸である国土交通省地方整備局や農林水産省地方農政局など六機関は、新設の「地方振興局」と「地方工務局」に再編される形で“温存”決着となった。
推進委に事実上のゼロ回答を続けた府省側の抵抗の影響をもろに受けた格好だ。特に国道や一級河川の地方への移管について、国交省の“出し渋り”から結論が先送りされたのは遺憾である。
権限移譲の吟味が十分でない中での組織統合では、かえって強力な権限を持った巨大出先機関をつくることになりかねない。それでは地方分権の流れを逆行させることになる。地方側から懸念が出るのは当然であり、さらなるスリム化が最低限必要だろう。
丹羽宇一郎委員長は最終局面で将来的に三万五千人程度の職員を減らす数値目標を盛り込み、官僚ペースの協議に一矢報いた。ただ完了時期は定かでなく、議論の生煮え感が否めない。絵に描いたもちに終わらせてはならない。
政府は勧告を受け本年度中に統廃合計画を策定する。勧告は不十分な点もあるとはいえ、それですら嫌う官僚や族議員が一層の骨抜きを狙うのは確実だ。
分権改革を軌道に乗せるには、政権の指導力が不可欠だが、求心力低下の著しい麻生首相に「突破力」があるかどうかは心もとない。政治空白のもと、分権改革の「看板」の掛け替えどころか、いつの間にか取り外されるようなことはあってはなるまい。
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