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一貫して薬物合法化を提唱するエコノミスト誌

Economistlogo_1 イギリスの政治・経済専門誌、エコノミスト 誌(The Economist)は長年一貫して違法薬物の合法化を唱えてきています。こんな権威のある雑誌が薬物の合法化なんていう、一見とんでもないことを唱えるのはなぜなのでしょうか?

こ れを説明する前に断っておかなければならないのは、エコノミスト誌では「そんなものやる人がいけないんだ」という立場はとっていないということです。長年 禁止政策が敷かれてきたにも関わらず、各国には依然として薬物の使用者は大勢います。つまり「薬物があり、それを使用する人がいる」という現実が出発点に なっています。

世界の二大医学誌の一つであるランセット誌でもマリファナに関する記事の中で「気分を変える物質を摂取したいという欲望は世界中の人間社会に、どの時代にも見られる特徴であり、厳格な禁止政策でもこの欲望を消すことはできていない」と言い切っています。また余談ですが、薬物を使用して陶酔したいという傾向は、進化に有利な特徴として残っていった可能性がある とする研究者もいます。

さらには、薬物によって違いはあるものの、大半の薬物使用者は普通に生産的な生活を送っていて、職を失ったり、破滅的な人生を送る人の割合は一部だという現実を認識したところからエコノミスト誌の合法化の話は出発しています。

2001年にエコノミスト誌に掲載された記事「The case for legalisation 」では、2つの理由を挙げて薬物を合法化するべきだといっています。

合法化を提唱する第一の理由
ま ず第一の理由は原理原則です。その原理原則というのは約150年前、イギリスの自由主義哲学者ジョン・スチュアート・ミルが提唱したことで、人が自分に危 害が及ぶような行為をしても、他の人や社会に危害を与えないかぎり、国にはその行為をやめさせる権利はないという考え方です。

同誌は「人は自分、自分の身体、そして自分の心の主権者である」というミルの有名なことばを取り上げ、「我が誌は一貫してこの考え方を信奉しきている」と記事の中でいっています。

この原則はべつに突飛な考え方ではなく、大半の民主主義国家ではこれを基に政策が決定されています。例えば、登山、オートバイの運転、喫煙、飲酒、バンジージャンプなどの危険行為については、他の人に危害を与えない限り、国家は寛容な立場をとっています。

こ れが1つ目の根拠です。つまり、人に迷惑をかけない限り、自分に危害が及ぶようなことをするのは自由だという原則です。同誌ではこの第一の理由の説明を次 のように締めくくっています「(このような危険行為をすれば)保険会社や母親は戦々恐々とするだろうが、国家はきわめて寛容である」と。

第二の理由
第二の理由は、実利的に考えて合法化したほうがいいということです。つまり、薬物を禁止し続けることによるデメリット、そして合法化することによって得られメリットを天秤にかけてみた結果だということです。

禁止政策の最大の問題は、薬物の取り引きがすべて地下に潜ってしまうこと、いわゆるブラックマーケット化してしまうことです。そうなるとさまざまな弊害が起こってきます。

ま ず、薬物の取り引きを犯罪組織が扱うようになります。これはその昔、アメリカの禁酒法時代に巨大なギャング組織が暗躍したのとまったく同じ構図です。そう なると、当然「品質管理」も行き届きません。薬物そのもの以上に危険な混ざりものが入っていても分からなくなってしまいます。(禁酒法時代はメチルアル コールの被害が多発しました)

また、禁止されていると、使用者に適切な教育を実施することができなくなります。さらには、注射針の使い回しなどでAIDSなどの感染症が蔓延する原因にもなります。

逆 に、たばこやアルコールなどと同じように、適切な規制を設けて合法化すれば、上記の問題は大方解消されます。一定年齢以下への販売の禁止、販売店の免許 制、広告の禁止、運転中の使用の禁止など、規制を設けたうえで販売できるようにすれば、まず組織犯罪を排除することができます。

さらに、薬物を使用する人に安全な使用方法を教育することもできるようになります。(被害軽減の説明もご覧ください)。そして当然、薬物に課税できるようになります。その他に、警察力、裁判所、刑務所などにかかっている大きな社会負担を軽減することがができ、警察はもっと凶悪な事件に資力を割り当てられるようになります。

「The case for legalisation」の記事は次のように締めくくられています:

合 法化は一筋縄ではいかないが、政府の役割は、第一に手に負えない薬物使用者が他の人に危害を与えるのを防ぐこと、そして第二に規制を設けて最低限の品質と 流通の安全を確保することである。前者は警察がすべての薬物使用を取り締まるのに時間をとられている間は難しく、後者は薬物が違法である限り不可能であ る。薬物使用の危険性を、アルコールやたばこの使用と同レベルにするには合法化が最善の策である。そして、社会はこの2つ(酒とアルコール)の悪習に寛容 であるように、薬物を販売、使用する人にも寛容になるべきである。

 

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