会員各位
2008年12月4日
(中)日本リウマチ学会理事長
小池隆夫
毎日新聞及び週刊新潮の各記事に関する緊急コメント
この度、毎日新聞平成20年11月26日夕刊(但し、東京都内版と名古屋等一部地域版のみ)、及び週刊新潮12月4日号に、当学会抗リウマチ薬市販後調査特別委員会(以下PMS委員会とする)が、あたかも製薬会社から金員を受領していたかのような誤った記事が掲載されております。学会として、これらの記事に対し法的処置をどのようにするかは、今後検討していくところですが、会員の皆様から事の真偽に関するお問い合わせも多く、ご迷惑をおかけ致しておりますので、ここに、事の経過等をご説明し、もって会員の皆様に事態を正確にご理解いただきたいと考え、このコメントをお送りいたす次第です。
- アメリカリウマチ学会は、当委員会が作成し、2007年アメリカ合衆国ボストン市で開催された、アメリカリウマチ学会年次学術集会で発表した抄録に対し、別紙の英文の正誤表を本年10月1日付のホームページに掲載しています。(日本語訳も添付致します。)この主たる内容は、
- (1)エタネルセプト製造販売後全例調査はワイス社が実施していること
- (2)PMS委員会は、厚生労働省の要請に基づき設立され、第三者的(独立した)見地から助言をなすために設置されたこと
- (3)同委員会への参加に対する報酬は支払われていないこと
- (4)市販後調査プログラムはワイス社が主導し、全例調査の経費は、日本ワイス社と武田薬品株式会社が各々負担したこと
というものです。 なおこの記載は、アメリカリウマチ学会の1会員から、当該演題に対して、利益相反の疑義に関する手紙が送られてきたことに対して、アメリカリウマチ学会から当学会宛に問い合わせがあり、当学会がこれに回答した結果にもとづいて記載されたものです。
- 週刊新潮記事(添付記事の54頁)には
「だが、この日本リウマチ学会に対して、一石を投じたのが米リウマチ学会である。去る10月1日、米学会のホームページ上で、〈 中 略 〉と指摘、こう続けた。〈日本リウマチ学会の安全性を検証した論文は、検証される立場の製薬会社が研究費を肩代わりしていることが判明した〉」
と記載しています。しかし前記1の(1)から(4)の通り、アメリカリウマチ学会のホームページ上に上記“研究費を肩代わり”した旨の記載はなく、この〈 〉部分は、全くの捏造記事です。特に「研究費を肩代わりしている」との文言を使うことによって、発表論文の公平性・中立性に疑義を生じさせるものであり、学会及びPMS委員会・同委員の先生方の信用を、深く貶めています。
- 当学会が、PMS委員会委員の先生方に支払いました日当・交通費は、当学会が各種委員会や理事会開催の時に先生方にお支払いしている額と同額です。かつ同委員会は全部で15回開催され、会場費を含む経費の総額は約253万円となっております。
- 学会は(日本)ワイス株式会社との間で、2005年4月20日「エンブレル安全性評価に関する医学専門家委嘱契約」を結んでいます。同契約第8条では、ワイス(株)が当学会に対し「会場費」、「交通費」、「宿泊費」を支払う旨明記しております。当学会は、(日本)ワイス株式会社から、前段の3に記載したように、当学会の規定に従った日当・交通費及び会場費の(総額約253万円)の支払いを受けています。念の為付言致しますが、当学会が、ワイス社からこれ以外のいかなる名目においても金員を受領した事実はありません。 したがって、毎日新聞記事の「計約400万円」に及ぶものではなく、同記事は、この点について当方に問い合わせもせず、全く不正確な一方的な情報にもとづく誤った内容であります。また、週刊新潮記事(同記事の55頁)には、「ある委員は、海外の学会へのビジネスクラス航空券も、ワイス社に払って貰っている」と「学会関係者」が言っている、旨の記載がありますが、PMS委員会委員長でもある私が、再度調査いたしましたが、そのような事実はありません。
当学会が(日本)ワイス株式会社との間で前記契約をした理由は、市販後の全例調査は本来ワイス社が厚労省より義務づけられたものであり、当学会は厚労省の指示により第三者として協力を求められたという状況下で、それに要する必要経費を学会負担とすることに疑問を抱いたためです。当学会は会員の皆様からの会費を主たる収入として活動しています。したがって、私企業に義務付けられた調査に関する必要経費を学会負担とせずむしろ当該私企業の負担とした方が、学会会計のあり方として妥当と考えております。 また、当学会が、私企業から必要経費分を受領したことをもって、PMS委員会や同委員会の先生方の第三者性や中立・公平性を害する恐れが生ずるとは思えませんし、そのような評価を受けることは、常識的に考えられないからです。したがって利益相反で考慮されるべき経済的な利益性は問題にならない、と考えております。
また、臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン(平成18年3月公表・文科省)によれば、
「(臨床研究に関しては)一般的な利益相反問題とはやや性格を異にする側面がある。」ことを指摘した上で、「当該研究者の経済的な利益(金銭など)やその他の関連する利益(地位や利権など)の情報を………開示し………ていくこと……」(同ガイドライン5頁)
を基本的な考え方として示しています。これを前提にすると本件について、学会・PMS委員会は「経済的な利益やその他関連する利益」を得ていません。
なお、同ガイドライン作成の班長であった曽根三郎・徳島大学医学部教授は、本件について
「医薬品開発では産学連携がかかせない。製薬会社と金銭的な関係があることが悪いのではなく、それについて説明責任が求められる。日本では利益相反規定を持つ学会は少ない。ルール作りを急ぐべきだ。」(同記・毎日新聞記事)
とのコメントを寄せ、本件について利益相反であるとの見解を示していないことも注目すべきと考えます。
因みに、当学会では平成20年4月21日に利益相反に関し、「日本リウマチ学会利益相反委員会規則」を策定していますことを付け加えます。
以上の次第でありますので、会員の皆様方の正確なご理解を承りたいと存じます。
本件につきまして何か疑義のある会員におかれましては、学会宛お問い合わせ下さるようお願い申し上げます。
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