《「人の命を奪ったものは自分の命で償うべきだ」と考えているので、殺人事件では「死刑」を主張することになると思う。ただ、その結果、被告が死刑になり、そのショックで自分がPTSDになったとき、誰がその責任をとってくれるのだろうか》
「裁判員制度は悪制度だ」と主張する方からのメールだ。人を裁くことに不安があるということだろう。
■写真で見る■ いよいよ実施へ、こんな裁判員グッズ(?)も…
メールには《自分自身が命を奪うことにかかわったことがないのだから…》と付記されていた。主婦(43)からのメールでも《人の人生にとても大きくかかわってしまった後、裁判員の精神的なフォローは誰がしてくれるのかが心配》と記していた。
裁判員になるということは「死刑」を言い渡す判決にかかわる可能性があるということでもある。人の死にかかわる重みは、もしかしたら刑が執行した後に感じられるものかもしれない。仮に死刑でなくとも、被告の人生に大きく関与することになる。
人を裁くことへの不安について、法務省の担当者は「神様のように被告人の人生の裁きをするわけではないんです」と言う。
どういうことだろうか。
「例えば『有罪にするにはこれでは証拠が足りない』といったことをチェックするのが裁判員の役割。直感で犯人だろうと思ったとしても証拠が不十分ならダメ。裁判員が判断するのは検察官の立証が成功したかどうかなんです」
死刑という判断もそうだが、刑事裁判では殺人事件などの審理で、例えば、遺体の写真があったり、残忍な犯行状況が詳細に証言される場面に立ち会うこともある。裁判取材で傍聴席から聞いていても、事件の悲惨さに聞くに堪えないという思いを抱くこともある。
裁判は悲劇的な事柄で満ちあふれている。そうしたことに直面し精神的ショックを受ける人も出てくる可能性もある。
最高裁は裁判員の不安を少しでも解消してもらえるようにと、24時間対応の無料電話相談窓口を設置する方向で検討しているところだという。(河)
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