オバマ次期米大統領は経済閣僚チームにヘビー級の人材を集めた。国家経済会議(NEC)議長にサマーズ元財務長官を起用するが、経済回復顧問委員会議長にボルカー元FRB議長となると、財務長官に指名したガイトナー・ニューヨーク連銀総裁は子どもに等しく見える。
未曽有の金融危機というブッシュ政権の負の資産を引き継ぐオバマ新政権は、不況拡大を止め、金融システムの立て直しに取り組まねばならず、まずは時間との戦いである。だから、重鎮が連なるオバマ経済チームの発表は、ウォール街にとりあえずの安心感を与える即効的な意味合いも大きい。
そこで、民主党が過半数を制した上院によるガイトナー次期財務長官の指名承認も確実視されているが、ワシントンの友人によるとそうたやすく問屋は卸さないという。
「ごまめの歯軋(はぎし)り」のような話だが、金融危機のすべてをブッシュ政権の責任と片付けられては心外だとする共和党のリベンジだ。
サマーズ氏はクリントン政権の財務長官時代に金融危機の悪の温床となった金融派生商品の規制緩和法案の成立を推進した張本人だ。こんどは金融活動の規制に動くとなると、姿勢の一貫性が問われる。ガイトナー氏は、ポールソン現財務長官、バーナンキFRB議長とともに、ベアー・スターンズには公的資金を注入したがリーマンの破綻(はたん)は目をつぶり、AIGは救済するなど、ちぐはぐな政策で危機を増幅させた。政府介入を嫌う市場原理主義者の多い共和党に言わせれば「前科あり」だ。
ガイトナー次期財務長官の指名承認公聴会では、承認が不必要なサマーズ氏も含めて責任追及の構えだというから見ものだ。(昴)