一線の記者を指示したり、現場から送られてきた原稿をチェックするベテラン記者を「デスク」と呼ぶ。新聞製作の要である。このコーナーは各部のデスクが毎日、持ち回りでニュースの裏側や身辺の雑観をつづってきた。
始まったのは一九九八年四月一日付。開始時の執筆者はすでに退いている人、物故者もいる。私は今回で七十八回目の掲載となる。初回は東京支社の一記者だったにもかかわらず、諸先輩を差し置き三番目に登場した。
当時、岡山出身の橋本龍太郎首相に密着取材をしていたため、例外で「書いてみろ」と機会を得たのだろう。見出しは「目離せぬ首相の言動」。読み返すと、金融機関の破たんが相次ぐ状況だったことから「首相がリーダーシップを発揮し、政権の命運を景気対策にかけねば先は見えない」と主張していた。何と生意気だったことか。
若手のころデスクは怖い存在だった。取材が甘いと原稿の書き直しを命じられた。「何のために記者になったか考えろ」「小さな声に敏感になれ」「現場に行かねば何も分からんぞ」。記者の心得もたたき込まれた。
こうしたデスクの考えや素顔の一面を、読者の皆さまに伝えてきたデスクノートは、きょうで最終回。十日から、本紙が新しい紙面展開を始めるのに伴う。始めのための終わりである。
(メディア報道部・江草明彦)