ホンダが自動車レースの最高峰F1シリーズから今年限りで撤退するという。金融危機と、日米などでの販売不振の直撃を受けた。
創業者の故本田宗一郎氏がレースカー開発を命じたのは一九六二年のことだ。「F1って何ですか」「おれだって知らない」。その時の技術者たちの会話である。本田氏は「技術の実験室」としてF1参戦を決断したという。
世界に挑む思いや、若い技術者に夢を与え、育てる狙いもあったのだろう。エンジンの燃料噴射装置など新しい技術に果敢に挑戦、わずか三年後の六五年、メキシコ・グランプリで初優勝を飾った。
そのホンダを含む自動車メーカーなどが、全日本学生フォーミュラ大会を開いている。大学生たちがレーシングカーを設計、製作し、二十二キロの耐久走行でタイムや加速性能、燃費などを競う。デザインの審査部門もある。
岡山大学の学生有志も二〇〇五年から出場している。九月に静岡県であった今年の大会では燃費部門で二位に輝くなど二つのトロフィーを獲得した。昨年のマシンよりエンジン制御用コンピューターやターボ機能などを改良したそうだ。
F1撤退を一番悔しがっているのはほかならぬホンダの技術者たちだろう。だが、若者たちの夢ははぐくみ続けてほしい。未来のために。