不況による労働者の解雇が次々発表される中、実は派遣など正規雇用ではない労働者には年明け大きな壁が待ち構えています。法律で決められた雇用契約の期限が来年一斉にやってくる「2009年問題」。さらに大量の失業者が出る恐れがあるというのです。
派遣社員の圓山浩典さん(46)。兵庫県の三菱重工業高砂製作所で働いています。8年半の間、発電用ガスタービンの部品を製造するラインに携わってきましたが、来年3月に派遣契約の期限がやって来ます。
「社員になって、安定した雇用がほしい」(圓山浩典さん)
派遣労働者が一斉に契約の期限切れを迎える、それが「2009年問題」です。
問題の発端は2006年に発覚した偽装請負問題。キヤノンや松下電器など日本を代表する大企業の不正が明るみに出て、多くのメーカーが請負の社員を一斉に派遣や期限付きの雇用に切り替えました。
圓山さんも本人が知らないうちに請負から派遣にかわっていました。妻と共働きで2人の子供を育ててきましたが、8年半の間、給料はほぼ一定で毎月およそ25万円です。
「(Q.正社員と待遇の違いは?)給料は雲泥の差」(圓山浩典さん)
法律では、派遣は3年以内と決められていて、圓山さんの期限は来年3月31日。偽装請負問題をきっかけに、2006年に3年間の派遣契約を結んだ人たちが、来年、一斉に期限切れを迎えます。
厚生労働省は、3年が過ぎた派遣労働者について、▽直接社員として雇用するか、▽適法な請負契約にするよう企業に指導していますが、実際は景気の悪化により派遣の期限切れと同時に失業する人が増えると見られています。
不安を感じた圓山さんは、地域の労働組合「はりまユニオン」に加入し、「正社員にしてほしい」と会社側に直訴しました。
「2009年問題で多くの派遣の方を抱えていて、どういうふうにされるのか。圓山さんについてどういう扱いになるのか」(圓山さん側)
「我々としては、まず雇用不安をおこさないということを考えて検討させていただいているところ」(三菱重工)
会社側は取材に対し、「厚労省の指針に従い、直接雇用または請負にするよう検討している」と答えました。
派遣は、企業に都合のよい形で急速に拡大し、今や派遣労働者は全国で321万人。労働者の3人に1人は非正規雇用です。
「会社の方の立場で考えて、派遣を受けるメリットは、安い、実質的には。退職金やボーナスがいらない、福利厚生費もいらない。クビが切りやすい」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングチーフコンサルタント・神野俊和さん)
労働者の派遣に対する規制を強化すべきだという声が高まる中、先月20日、圓山さんは東京・永田町にいました。日弁連が開いた集会で、国会議員らを前に派遣の当事者として実情を訴えるためです。
「今、自分が声をあげないと何も変わらないと思い、勇気を出して決断しました。妻の雅子、息子と娘も『お父ちゃんは間違ってない、がんばりや』と背中を押してくれました。私は父親として家族を守りたいだけなのです。安心して働きたいだけなんです。私たち労働者は人間なのです」(圓山浩典さん)
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「人をコストカットの対象にできる就労形態として派遣をどんどん導入したと。少なくとも直接雇用が最低限の企業の責任だと思うんですよ」(村田浩治弁護士)
不景気の嵐の中、メーカーの派遣労働者が直面する2009年問題。失業の不安を抱える労働者が、今、声を上げ始めています。(09日15:51)