「専門看護師」「認定看護師」という資格がある。高い看護の技術や知識を持つと日本看護協会が認めた人たちだ。
特に専門看護師は、看護系大学院修士課程2年の修了者で、専門の看護分野の実務研修が3年以上あり、うち1年間は大学院修了後と厳しい条件がある。
今月初め、日本看護協会の認定審査をパスした66人が発表された。
「がん」「精神」「地域」「老人」「小児」「母性」「慢性疾患」など看護の専門によって分かれ、今回からは「家族支援」が加わって10分野となった。
1996年から認定登録が始まり、今回の66人を入れて全国で304人となった。最多は東京都で65人、神奈川県42人、兵庫県38人、大阪府34人と続き、九州では福岡県5人、熊本県4人と大分県1人の合計10人にとどまる。意外なのは高知県で10人いる。高知女子大が大学院で早い時期から養成に取り組んできたことが大きい。
医療の進歩、高度化とともに看護師もレベルアップが求められている。国は、患者の在院日数の短縮や、地域や職場での生活習慣病の予防などによって医療費の削減・抑制を図ろうとしている。
退院後、円滑に在宅療養に移れるように家族やかかりつけ医ら地域の理解と協力を得て、1人1人の患者に合った計画をつくるのはなかなか難しいという。その調整役として技術と知識、経験に裏打ちされた専門看護師に期待がかかる。
病気にならないための健康管理、予防医学の重要さが言われ始めた。だが、まだ職場や地域、医療関係者の中にも温度差がある。このため、大手企業の中で従業員の啓発や指導、企業内の組織間連携などを推進している専門看護師もいる。
だが、その存在も活動も社会全体から認知されているとは言い難い。九州7県では専門看護師を養成する課程が看護系大学の大学院にないこともあって、取り組みは大都市圏に比べ遅れ気味である。
九州でももう少し関心を高めたい、と佐賀大医学部看護学科の井上範江教授は考えて、先月、同大で開かれた「日本看護研究学会九州・沖縄地方会学術集会」のメーンテーマに取り上げた。
当日、広島県内の24時間型訪問看護ステーションに勤務する「がん看護専門看護師」ら4人が活動報告した。
国の医療・介護費抑制政策に伴って、高齢者の療養の場は病院や施設から自宅へと移ろうとしている。在宅で本人の生活の質を維持しながら家族の精神的・肉体的な負担も軽減する。そのために医療機関や地域の関係者によるネットワークづくりが始まったばかりといえる。
こうした転換を円滑に進めていくのに看護師の果たす役割が大きいことは言うまでもなかろう。そのためには看護師の一部ではなく、全体の底上げが必要である。専門看護師らの努力を社会が積極的に評価することも、その一助となろう。
=2008/12/09付 西日本新聞朝刊=