「産科への協力にも報酬上の評価を」
厚生労働省は12月8日、「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」(座長=岡井崇・昭和大医学部産婦人科学教室主任教授)の第4回会合を開いた。会合では、周産期や救急医療への診療報酬上のインセンティブや医師の労働状況の改善について話し合った。
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この中で、有賀徹委員(昭和大医学部救急医学講座主任教授)は、「交代勤務を行いたくても、人が足りない。救命救急を5割増にするのでも、原資としては診療報酬が必要。これを議論しないと始まらない」と指摘した。
また、海野信也委員(北里大医学部産婦人科学教授)は、「この懇談会は、妊婦さんに安心してもらうために、産科以外にも積極的に診てもらうという趣旨だ。時間外の対応などは、協力してくれる科にも点数を付けることが必要ではないか」と述べた。
これに対し、木下勝之委員(順天堂大医学部産婦人科学講座客員教授)は、「診療報酬を厚くするというと、ほかから減らすかという話になる。政治の問題になる」と疑問を呈した。同時に、「産科は5年後にはもっと悪くなると思う。文部科学省は、(医学生の)科の選択に枠をつくることも考えることも必要ではないか。そうでもしないと、産科などは増えるわけがない」と指摘した。
一方、川上正人委員(青梅市立総合病院救命救急センター長)は、「インセンティブが与えられれば、さらに働けるというものでもない。だが、まず診療報酬上の点数を与える必要がある」と述べた。
■重症心身障害児の「NICU後」の支援求める
NICU(新生児集中治療室)での重症児入院が長期化し、その後の受け皿がないことも問題視されていることから、懇談会では、重症心身障害児もテーマとなった。
重症心身障害児の医療を行っている「東京都立東部療育センター」院長の有馬正高参考人に対し、海野委員が「都内には約1200人の重症心身障害児がいて、施設のキャパシティーは限界で、毎年新規に10人ほどしか入れないのは本当か」と尋ねると、有馬参考人は「事実だ」と答えた。
有馬参考人は、NICUからの退院が困難な理由として、高度先進医療が継続的に必要で、受け入れ可能な医療レベルを備えた施設がほとんどないことなどを挙げた。また、重症心身障害児がNICUを出た後の受け皿となる施設では、医療的な管理や在宅移行に向けた家族への医療的・精神的なケアが必要であることを報告した。
このほか、在宅移行を支援するため、重症児医療ネットワークの構築や日常的な訪問看護と指導、家族のレスパイトなどに利用される在宅支援病床、緊急医療体制などの整備も要望した。
懇談会は次回を最後の会合として、報告案についての議論を行う予定。
更新:2008/12/09 17:32 キャリアブレイン
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