派遣社員などの「非正規切り」の続発を受け、厚生労働省は9日にも全国の労働局に一斉通達を出し、大量の人員削減を予定する企業に対し、不適切な雇い止めや解雇をしないよう指導を始める。工場で働く非正規労働者が、解雇とともに寮を追い出されるケースも多いことから、次の仕事が見つかるまでは寮にいられるように、企業へ要請もする方針だ。
非正規労働者の解雇や雇い止めをめぐっては、厚労省が把握するだけでも来年3月までに製造業を中心に3万人以上が職を失う見込み。労働組合などからは「十万、数十万の規模にのぼるのでは」との声も出ている。
通達では、労働基準監督署が大量解雇の情報を得た場合は、企業に対しすみやかに監督し、必要な指導をするよう指示。「非正規は簡単に切れると思われているが、実は厳しい規制があることを示し、抑止力にする」(厚労省幹部)のが狙いだ。
派遣や期間工など有期雇用者の解雇(契約の途中解除)は、労働契約法で、やむを得ない理由がなければ解雇できないとされており、正社員の解雇要件よりも、規制が厳しいとされている。
期間満了に伴う「雇い止め」も、判例で、期間満了ごとに当然のように更新を重ねている場合や、雇用継続への合理的な期待が認められる場合は正社員の解雇要件に準じるとされ、実際に雇い止めが無効とされたケースもある。
だが、いずれも罰則はないことから、不適切な雇い止めや解雇も多いとみられる。厚労省は、訴訟になれば企業が負けるケースがあることも周知し、非正規切りの抑制を求めたい考えだ。
(生田大介)