公判の後、記者会見する磯谷富美子さん=名古屋司法記者クラブ
「2960(ニ・ク・ム・ワ)」。闇サイトで知り合った3人が名古屋市千種区の会社員磯谷利恵さん(当時31)を拉致・殺害したとされる事件で、死の直前、キャッシュカードの暗証番号を教えるよう脅された磯谷さんが偽りの番号で「命のメッセージ」を伝えようとした――。強盗殺人などの罪に問われた3被告に対する名古屋地裁の公判で8日、母富美子さん(57)が証言した。
富美子さんは、数字のことを検察官から磯谷さんの知人を通じて知らされたという。磯谷さんは数字の語呂合わせが好きだったといい、この日の法廷で2960の意味を尋ねる検察官に、富美子さんは「憎しみを伝えようと気持ちを託したのだと思います」と答えた。
証言は約2時間にわたり、法廷の大型モニターには磯谷さんの生後間もないころから事件前までの写真十数枚が映し出された。3被告は写真に目を向けたり、目を閉じてうつむいたりしていた。
富美子さんは、警察署で磯谷さんの遺体と対面したときの状況についても話した。「強く抱きしめてあげたかったけれど、顔がひどく変色していて、抱きしめたら痛がるんじゃないかと思った」。そして、「娘は殺されるために生きてきたんじゃない」と裁判長に死刑判決を求めた。(岩波精)