医療とメディアの関係について再考してみましょう
最近でこそ、いろいろなメディアで「医療崩壊」について取り上げられるようになり、勤務医の過酷な実態などが報道されるようになりました。しかし、つい最近までは、メディア報道の多くは「医療不信」に関するもので医師がたたかれる場面も多くありました。
もちろん、医療者側にも問題があったのでしょうし、本稿の目的でないのでこのことについてこれ以上議論することはしませんが、医師医療者にとってメディアとの距離が広がった時期であったことは否めません。筆者自身も長く臨床現場で働いていましたが、「(うまくはいいあらわせないけど)なんか違うな」というような漠然とした違和感を抱いていたことを覚えています。
このような、いきさつがあったからか、学会などで医療とメディアの関係を科学的に議論する機会は、筆者の知る限りほとんどありませんでした。ところが、最近、筆者らが医療とメディアに関して議論したボルテゾミブの事例研究がJournal of Clinical Oncology誌(電子版)に、そして、ほぼ同時期にJournal of the National Cancer Institute(JNCI)誌にがん医療に対するメディアの影響と題したSharma氏による論説がそれぞれ掲載されました。両誌とも世界のがん研究者に最も読まれている学術雑誌です。