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【社説】

政権失速 大局読めぬ当然の帰結

2008年12月9日

 目を覆う内閣支持率の急落である。早期に民意を問うはずが、ためらった揚げ句、政策面での迷走劇を次々と露呈。有権者の心は離れ、麻生政権は失速した。大局を読めない政治の当然の帰結だ。

 内閣支持率が30%を割り込むと、政権は危険水域に入るとの見方が政界では定着している。

 各種世論調査で麻生内閣支持率は20%台前半から中盤にとどまり、発足後三カ月足らずで福田前内閣の末期の状況にまで落ち込んだ。退場を求めるレッドカードのような警告が、国民から麻生太郎首相に突きつけられた事実は重い。

 就任以降、首相の政権運営は迷走を重ねてきた。自ら至上命令と課した臨時国会冒頭での衆院解散は、総選挙勝利のメドが立たずに先送り。代わりに、米国発の金融危機の対処へ景気対策を最優先する姿勢を打ち出したが、対策を盛り込んだ第二次補正予算案の今国会提出を見送るという不可解極まりない対応をとった。

 「百年に一度の金融災害」といいながら、政権内から危機感が全く感じられない。露見するのは、定額給付金や道路特定財源の一般財源化などで首相指示の迷走に伴う混乱ばかり。首相の失言はまさに自滅に近い。機能不全に陥った政権のもと、政治空白が延々と続く。そんな失望感が支持率急落に込められているのだろう。

 冷たい視線にさらされているのは何も首相だけではない。責任の一端は与党にもある。

 自民党内では早くも「麻生離れ」が加速。幹部からは「ポスト麻生」論の言及すらある。選挙の顔として、二カ月余前の総裁選で首相を圧勝させたのは自分たちではなかったのか。選んだ責任はどこへいったのか。無節操すぎる。

 二代続けての政権投げ出しの後の政権が、同じ轍(てつ)を踏みかねない状況に追い込まれている。人材の枯渇も含め、政権党たる党の能力に限界が訪れている。その現実を甘く考えるべきではない。

 公明党も総選挙に向け定額給付金に固執するが、国民に不評であることを直視すべきだ。

 政権失速の中、衆院三分の二勢力を背景に居座りを決め込むまねは避けるべきだろう。有権者へのさらなる裏切りになるからだ。

 民主党は雇用対策に絞った二次補正を年内に提出するよう求めている。年末に向けて募る雇用不安や失業対策に与野党が協力した上で、速やかに信を問う。それが首相の取るべき道ではないか。

 

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