世論調査で麻生太郎内閣の支持率が急低下している。景気や雇用情勢が急速に悪化しているのに、麻生政権は第2次補正予算の提出を先送りし、景気対策が後手に回っていると見られているためだ。政権の求心力低下によって予算編成や税制改正も官僚・族議員主導に戻りつつあり、改革逆行の動きが目に付く。迷走する政治の現状は憂慮に堪えない。
日本経済新聞が今月1日に公表した世論調査では麻生内閣の支持率が31%に急低下。「次の首相はどちらがふさわしいか」では、小沢一郎民主党代表に倍以上の差をつけていた麻生首相が小沢氏に並ばれる結果が出て、政界に衝撃が走った。
8日に公表された読売新聞や朝日新聞の世論調査では支持率がさらに落ち込んで21―22%まで下落。「どちらが首相にふさわしいか」では、麻生首相が小沢氏に逆転される結果が出た。いまや「景気の麻生」の看板は色あせ、「選挙の顔」としての期待感も吹き飛んだ格好だ。
麻生政権の失速は、首相の資質を疑わせるような問題発言が相次いだこともあるが、最大の要因は「政局より政策」「景気最優先」と言いながら、今国会に景気対策を具体化する第2次補正予算の提出を見送ったことだろう。首相が補正見送りを決めた11月25日以降、派遣や期間社員の契約打ち切りが相次ぎ、雇用情勢の悪化が急速に進んでいることが明らかになった。対策が後手に回った面は否めない。
麻生首相は「非常に厳しい数字だ。私への評価だと受けとめている。景気対策、雇用対策の期待に十分応えていないという批判だと思う。しっかりした対策を進めていくしかない」と述べた。民主党は麻生政権を揺さぶって早期解散に追い込むとしているが、仮に来年の通常国会で予算審議を引き延ばすような行動に出れば、世論の批判の矛先が民主党に向かうことを覚悟すべきである。
与党内では「麻生おろし」の目立った動きは出ていない。後継者が見あたらないことに加え、与党内の政権のたらい回しはすでに限界にきている事情があるからだ。この低支持率では解散に打って出ることもできず、八方ふさがりに陥っている。
前回世論調査では、金融危機の広がりで衆院解散の時期は「来年春以降」「9月の任期満了」がよいとする意見が多かったが、今回の調査では「できるだけ早く」「来年の通常国会冒頭」と答える声が多かった。「景気対策を先送りするなら、早く解散して政治は出直せ」という声に首相はどう応えるのだろうか。