政府の地方分権改革推進委員会が国の出先機関の見直しを柱とする第2次勧告をまとめた。国が法令で自治体に義務づけている施設基準の廃止なども盛り込んだ。勧告内容をみると評価すべき点もあるが、この程度で分権委が掲げる「地方政府」の実現につながるのか疑問だ。
今回、見直しの対象となったのは国土交通省や農林水産省など8府省の15機関である。職員数は合計で9万6000人、予算は2006年度決算で9兆6000億円に上る。
勧告ではこのうち、地方整備局や農政局、運輸局など6機関をブロックごとに統合するように求めた。事故米問題で批判が集まる地方農政事務所と中央労働委員会地方事務所は廃止し、総合通信局や法務局などについては現行の組織を残すものの、人員の削減を要請している。
統廃合に併せて、国営公園の管理、健康食品の広告規制、介護タクシーの許認可などの権限を地方に移す。焦点である国道と一級河川の移管は国交省と都道府県の協議が続いているため、結論を先送りした。
国の出先機関は01年の中央省庁再編時にも大半が温存されただけに、二重行政を解消するうえで一歩前進だろう。しかし、今回見直す出先機関の事務は全体の3割弱で、地方に移管する事務は多くない。
改革に関連して削減可能になる出先機関の職員数も当面、1万1000人程度にとどまる。地方への財源の移譲額も不明なままである。
すでに国交省や経済産業省など複数の省庁が相乗りしている沖縄総合事務局をみると、人事権は省庁ごとの縦割りのままで、看板が1つになったにすぎない。新たな総合機関も同様な組織になる公算が大きい。
国民の目が届きにくい出先機関を監視するために、自治体との協議機関を新設するという。ただし、自治体側が意見を提出するだけなので十分に機能するのか疑わしい。
省庁の抵抗が強いとはいえ、このままでは巨大な職員と予算を抱える新たなブロック機関に衣替えして終わりかねない。麻生太郎首相に今回の勧告の完全実施を求めると同時に、分権委には来春の第3次勧告に向けて、出先機関の事務の地方移管を上乗せするように要望したい。