2008年06月19日

東シナ海ガス田問題についての愚見

 昨日長年の懸案事項だった東シナ海のガス田問題についての合意がなされた旨日中両国政府から発表がありました。

 この問題は中国の軍事的な海洋戦略に密接に絡む問題であり、すなわち日本の安全保障や外交、経済面に長期的に見れば大きな影響を与えうる問題ですので慎重な評価と対応が必要です。

 北京の戦略を考えれば、日本がEEZ(排他的経済水域)のラインとして主張している日中中間線や実際の日本の自衛隊の哨戒ラインを少しでも日本側に押しやり、中国海軍の戦略核ミサイルを搭載した潜水艦の太平洋へのアクセスを向上することを可能とすることが長期的戦略の一番の眼目であろうと考えるのがもっとも論理的な推論であり、調査船や潜水艦の出没地域のデータを検証すればそのような北京の意図の状況証拠ともなっているのが現実です。

 エネルギー不足というカモフラージュ(多少は必要性もあるでしょうが)により資源開発をてこにして海洋戦略上必要な海洋権益や境界線を自国に有利なように持って行く手法はスプラトリー諸島における経緯をたどれば明確であります。

 そのようなこれまでのことを考えれば、今回の合意についても確かに中間線の中国側を含む海域での共同開発は一定の前進ではあるものの、落とし穴がないか、日本の長期的国益の観点から検証することが重要です。

 そんな視点で見てみれば、今回の合意の中での白樺ガス田に関する文章の中の次の一文はきちんとその持つ意味を検証されなければなりません。

「中国企業は、日本法人が、中国の海洋石油資源の対外協力開発に関する法律に従って、白樺(中国名:「春暁」)の現有の油ガス田における開発に参加することを歓迎する。日中両政府はこれを確認し、必要な交換公文に合意し、早期に締結すべく努力する。双方はその締結のために必要な国内手続をとる。」

 この文章に日本政府が合意するということは、日中中間線の日本側にかかっている白樺ガス田全体が中国の主権下にあるということを日本政府が認めたということに外交上、国際司法上なってしまうのではないでしょうか。

 この点については将来に禍根を残さないよう、外務委員会や党の会議の場で厳しく追及していきたいと思います。

 天然資源は確かに重要ですが、目先の天然ガスのために巨大なEEZを失い、日本の安全保障どころかアメリカ軍の東アジアへのコミットメントに影を落とすリスクを生じさせることはまさに愚の骨頂、あり得ない選択肢のはずです。


 と、ここまで書いたところで、今若手で行っている霞ヶ関の無駄削減プロジェクトの会議の開会自国となってしまいましたので、ここら辺で今日の稿は終わりにして引き続き議論していきたいと思います。



suzuki_keisuke at 13:49コメント(3)トラックバック(0)  この記事をクリップ!

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コメント一覧

1. Posted by うーん?ちょっと思ったこと    2008年06月19日 14:40
0000あの。安全保障と聞こえは良いのですが、>目先の天然ガスのために巨大なEEZを失い、日本の安全保障どころかアメリカ軍の東アジアへのコミットメントに影を落とすリスク。。といった軍事的な視点での発言は控えたほうが。。 私も会議があるんで、とりあえずひとことー日本の政治家がこのようなコメントを考え、書き込んでること自体が、一番の無駄なような気がしてなりません0000生意気いってすみません。
2. Posted by KY    2008年06月19日 19:39
外務省幹部のコメントとして、「これからが勝負」というのが紹介されていました。なにか大変な成果が上がったかのようなムードが多いのですが、長年の日本側の無為のツケという側面もあり、長期的視野から、結局は政治家が常にきめ細かに注意していくことが重要でしょう。頑張っていただきたいと思います。
3. Posted by CK10    2008年06月26日 02:09
鈴木さん、初めまして。

昨日、関西ローカルのニュースアンカーで青山繁晴さんがガス田問題について「日本は金出して石油を有り難く売っていただき、それを安値でもう一度中国に売る」という衝撃の事実を語っていました。YouTubeにもアップされています。http://jp.youtube.com/watch?v=m7vzwMSf4fU
自国の地下資源を奪われようとしているのに、これは本当なのでしょうか。あまりにもばかげていて、開いた口がふさがらないのですが。

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