もう10年も前から言われている、テレビCMの崩壊。ほんとうにジワジワでしたが、ここにきて一気に瀕死の状況が現れてきました。まさに、広告業界のクライシスです。電通をはじめ、大手広告代理店は軒並み連結純利益が前期比30〜50%減。その余波は、広告収入に依存している、マスメディアを直撃。各テレビ局の連結純利益は前期比30〜50%減、大手新聞社は未曽有(みぞう)の危機に瀕しています。サブプライムローン問題をきっかけにした金融危機は、まるで突然の津波のように広告界を飲み込もうとしているのです。
11月に発表された「ACC賞」。日本で最も権威のあるテレビCMコンテストです。「カンヌ国際広告祭」ほどではありませんが、長い歴史を持ち、広告業界の指針ともなってきました。
私は、クリエーティブディレクターをしていましたから、以前はACC受賞に一喜一憂したものです。
2008年のグランプリは、ソフトバンクモバイルの「ホワイト家族」。 ゴールド10作品の中から選ばれるのですが、ま、当然の受賞と言えるでしょう。
ちなみにほかのゴールド9作品は、
*「ママの誓い」ベネッセコーポレーション/たまごクラブ・ひよこクラブ・たまひよこっこクラブ
*「9ways」日本自転車振興会
*「あこがれのJAZZ CLUB」全日空空輸
*「番犬」セコム/ホームセキュリティ
*「出会い」黄桜
*「ブラボー証券の面々2」大和証券グループ本社
*「長期療養ベッド数削減」日本医師会
*「勝手に会議中継」大塚製薬/SOYJOY
*「宇宙人ジョーンズ・温泉」サントリー/BOSS
どうですか?見たことがあるものはいくつですか?三つしかない!?記憶にない!?それもそのはずで、見たことがないものは、露出量が非常に少ない。その上、テレビを見なくなっているのですから、当然のことです。実は、私もみたことのないCMがありました。恥ずかしい話ですが。
このベスト10を見てみると、昨年のベスト10に入った企業が、今年も3社入っています。グランプリのソフトバンクモバイル、日本医師会、サントリーのBOSS。以前は、こんなことはあまりありませんでした。印象的なCMがひしめきあい、ベスト10の奪い合いでした。そのころは、ひどいものがベスト10入りすると批判の渦でしたね。審査員は大変だったようです。
なぜでしょうか?いわゆる、CMの常連企業の撤退?制作費激減による質の低下?それとも、CMコンテストそのものの意義の低下?いずれにせよ、CMの注目度が下がったのは紛れもない事実です。マスコミもあまり取り上げなくなりましたから。
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