チュ、って音を立てて離したら、マーモンはしきりに口を拭ってた。なんか失礼だぞ、ソレ。

「もういいでしょ、本返して」

「はいはい、ムードねぇなぁマーモン」

「脅してんのにムードもあったもんじゃないだろ」

おとなしく本を返すと、大事そうに(いや、只たんに片手で持てないのか?)両手で抱えたマーモンは、少し怒った口調で言う。そりゃそっか。

「もう知らない。馬鹿ベル」

そう言って背を向けたマーモンは霧に包まれる。そんなに俺と居たくないのかよ、マジ傷付くし。
姿が完全に霧に包まれる前に、マーモンは振り返って、また拗ねたように唇を尖らせた。

「ベルがファーストキスなんて、最悪」

そう言い残して、マーモンは完全に霧に包まれた。
次第に霧がはれていく中、俺はいつもの笑みも浮かべられずただ呆然としていて。
完全に霧が薄れた頃、漸く理解して口を押さえた。
ニヤけ笑いが止められない。

「うししし、マーモンの初めて貰っちゃった」


拗ねてしまった可愛いあの子を探しに、俺は部屋を後にした。




END
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