らしくもなく純愛。




思い通りなんてならない






珍しく任務が無くて、暇を持て余しながらソファに寝転がる。暇潰しに冠に装飾されたビーズの数を数えてたけど、それももう飽きた。
目線を横に向ければ、向かいのソファにちまっと座ってるマーモンが居て、暫く見てたけど反応は返って来ない。
だって本読んでるし。
本当は俺の視線に気が付いてる筈なのに、何も言わないのは無視してんだな。この野郎。
小さな体に不釣り合いな大きなハードカバーを黙々と読んでるマーモンの、ページをめくる音だけが静かな部屋に響いた。
あっちから声をかけてくるのを期待して見つめてた俺だけど、とうとう我慢出来なくて声をかけた。
俺って忍耐少ねー。

「なー、マーモン」

「何、ベル」

寝返りを打って体を向き合うように寝そべる。
実はあんまり期待してなかった返事が返ってきて、少し驚くけど嬉しい。
俺達は仲がいいのだ。

「チューしていい?」

「……君、ペドフィリアだったの?」

得意の笑みを浮かべて身を乗り出せば、案の定呆れた声が返って来る。
それにしてもペドフィリアはないだろ。流石に赤ん坊に勃起はしない。

「ちげーよ。だって暇だしさー、マーモン赤ん坊だから超プニプニじゃん。」

「それ理由になってないよね。意味不明だし。そんなにキスしたきゃルッスーリアに言えば?喜ぶよ」

「ゲッ、勘弁しろよ。変態に掘られるつもりはないし」

「判らないよ、ルッスーリアがネコかも知れない」

会話はしてくれるけど、目線は未だ本を追うマーモンはとんでもない事を言ってくる。そんなにキスしたくないのかよ。傷付くぞ。

「キモい事言うなよ!想像しちゃっただろ!!」

「じゃあ僕にもそういう事言わないでよ。鳥肌立つ」

「俺はお前にとってあの変態と同類か!?」

「同じようなもんだろ」

王子の俺に向かってこんな事言うなんて、マーモンときたら相当いい度胸してる。
あの変態と一緒にするなんて、俺の国が泣くぞ(俺も泣きそう)。
飄々と答えるマーモンが気に食わない。しかもまだ本読んでるし!!
ムッと来た俺は、マーモンが手にするハードカバーを取り上げた。するとあっちもムッとした表情で見返して来る。

「何すんの、まだ読んでるんだけど」

「だってマーモン、俺のこと見ねぇんだもん」

いつも尖んがってる口を更に尖らせて、睨み付けて来る。
あー、でもそんなマーモンも可愛い。
小さな手をあげて、本を取り替えそうとしてくる仕草とかマジキュート。
本当チューしたい。

「なぁマーモン。チューくらいいいじゃん」

「しつこいよ。早く返して」

「チューしてくれたら返してあげる。でないとこの辺り血の雨降るよ」

本を掲げながら懐から出したナイフをちらつかせる。たかがキスごときで赤ん坊脅すのもどーかと思うけど、そうでもしなきゃマーモンしてくんないじゃん?
良く切れる自慢のナイフを首に当てて、笑みを深めた。
"プリンス・ザ・リッパー"の異名を持つ俺を舐めちゃいけないのだ。

「……馬鹿じゃないの。ベルがそんなアホだとは思わなかった」

「いーからいーから。はい、チュー」

ジトリと恨めしそうに睨み付けてくるマーモンを無視して、キスしやすいように屈む。
マーモンの目の前まで顔を寄せれば、心底嫌そうに溜息吐かれた。そして柔らかく小さな手が俺の頬に触れた。

「馬鹿ベル、阿呆ベル、ホモベル。君なんか嫌いだ」

マーモンは散々悪態を吐いて、少し躊躇らった後軽く唇を押し当てた。想像してたよりマーモンの唇はもっと柔らかくて、微かにミルクの香りがした。


んー、満足♪
やべ、ムラッと来た。





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