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December
08
2008
年の瀬が近づいているから、と言うわけではないが、今年は日本経済にとって散々な年となりました。昨年夏から始まったサブプライムショックは、当初海外の金融バブルの勢いに消され気味で、これほどまでに経済が悪化するとは、誰も思っていなかったでしょう。それから約1年半、株価はジリジリと値下がりを初め、反対に原油価格や工業原材料価格は、鰻上りで上昇を続けてきました。実体経済が下降線をたどりつつあるというのは、経済指標を見れば明らかで、特にアメリカの住宅バブルに関しては、すでに2006年にピークとなっていたはずですが、同年頃から登場したサブプライムローンが実体を覆い隠してしまいました。そして今年、最悪だったのは、投機筋による原油や工業原材料、穀物が経済指標と逆行して値上がりを続けたことです。都度開催されるG7でも、洞爺湖サミットでもまったく勘違いのCO2削減問題ばかりを主要議題にして、それらの投機的な動きを規制するという動きはまったくありませんでした。史上空前の好決算となった2007年度から2008年度の過度期となった5月、気が付くと日本では物価上昇の嵐に見舞われ始め、海外景気のスローダウンが鮮明になり、約70%以上が輸出頼りの日本企業の見通しは、軒並みネガティブ。日本にとっての最悪期は、この5月~9月であると思います。10月になるとリーマンブラザーズの破綻から一気に世界は同時金融恐慌へと向かいました。そして、アメリカや欧州を始め、中国でも、そして日本でも、大幅な金融緩和政策、低金利政策、公的資金の導入等々の経済政策をいっせいに打ち出してきました。今は、すでに12月となり、金融危機とともに原油価格を初めとする原材料価格の下落、穀物価格の下落へと突き進んでいます。こういう状況を年表のように並べてみると、意外なことに気が付きます。
まずは消費動向ですが、実際の可処分所得の底は、物価がピークを迎えた8月、9月ではないかということです。もちろん雇用不安の面で顕著になってきたのは11月、12月ですが、現実の可処分所得は物価下落の反映が始まってますので、指標的には相殺される傾向がすでに始まっていると思います。工業原材料に関しては、年明け2月~3月になると在庫対応が終了し、かなりドラスティックに下がり始めるはずです。これは、穀物価格も同様で、2009年3月頃には相当なメリットが出るはずです。加えて、為替動向が後押しします。つまり円高+輸入原材料価格下落となり、国内物価は非常に安定した状況になります。ですから、すでに消費動向は底打ちと考えて差し障りは無いはずです。
金融緩和政策の効果は、現在の政治状況から考えると、2009年春から夏にかけて非常に出てくると思います。現在でも、11月、12月では金融機関の企業向け貸出量は増加傾向にあると思いますし、今後実に様々な経済対策が実施されると思いますので、その結果国内マネーサプライは、今度こそ本格的に増加するはずです。その結果、内需はバブル崩壊以来、ようやく本格的に立ち上がってくると思います。懸案の輸出主導型企業の業績も、アメリカや中国の大型景気対策の恩恵をモロに受けるのは、日本企業であると思います。オバマ新大統領が情報ハイウエイ構想を再燃させるようですが、現実に世界の光ファイバーはほぼ日本の独占です。公共投資も大幅に増加するようですが、建設機械は日本のシェアは50%を優に超えています。各種プラント事業も日本のお家芸。危機的状況の後には、必ず復興プロセスがあり、実際にはこれによって大きく経済は発展します。その恩恵は、金融恐慌によってほぼ無傷な状況である日本がもっとも有利であることは、言うまでもありません。
端的に言って、国内マネーフローは2009年度の遅いタイミングでは、かなりだぶつくはずです。仮に円高傾向が今後も継続するとすれば、日本企業のダメージは、メリットによって相殺されてゆきます。それが起動に乗り始めるのは、2009年4月以降であると思います。そして、そのときには、日本市場に対して非常に多くの投資資金が海外から流入してくるでしょう。したがって、2009年の日本市場は、株式は非常に好調なはずで、国内マネーサプライがオーバーフローに転じる可能性がかなりあると思います。このことはすでに海外投資家は気が付いていることでしょうし、そのタイミングを現在は計っていると思います。今回の金融恐慌によって傷ついたヘッジファンドが、換金売りを継続していますが、その理由こそ、日本投資が最もヘッジ効果が高かったと言うことでしょう。
マネーサプライがオーバーフローになっても当面は日銀は金融引き締めは行えないはずです。財政的な理由もあると思われますし、様々な貸借処理に時間がかかるからです。となるどどうしても、日本経済はバブル傾向へと突入するのではないか、と言うのが僕の推測なわけです。このシナリオは前回の日本のバブルとまったく同じであるばかりでなく、昨年までのアメリカや欧州ともまったく同じでしょう。しかし、大きく違う点が一つだけあります。それは、今回は傷ついた海外対日本という、いわば「日本一極集中」となる点でしょう。
日本経済は明らかに底を通過したと思います。
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December
07
2008
ビッグスリーを暫定的に救済するという報道が伝わってきった。そのきっかけは、アメリカの雇用統計の数値が非常に悪かったということだそうだ。当然、自動車会社が破綻したりすれば、雇用への影響は計り知れないものがあるだろうし(一説には300万人が失業すると言われている)、それ以上に経済は大混乱に陥るのは明白でしょう。いくら、感情的には救済したくないと思ってみても、現実には救済しないとどうにもならなくなるというのが経済の実体なのかもしれません。
でも、日本の場合もそうでしたが、今回のアメリカの金融機関や保険会社、自動車会社の公的な救済というのは、資本主義の大いなる矛盾であることは間違いありません。この矛盾をはたして克服できるのか?といえば、これは簡単な事ではないと思います。日本の場合でも、金融機関や大手企業は公的資金で本当によく救済されました。しかし、中小企業は経済的な影響力が少ないから救済しないということで、バブル崩壊以降どんどんつぶれてゆきました。もっとも悲惨な例は、僕が経験した星野金属の例で、取引金融機関が突然破綻して、その取引先企業は連鎖倒産した、というなんともいえない事態だったわけで、「つぶさない」と言っていた金融機関をある日突然つぶしてしまった政府のやり方には、本当に憤りを感じたものでした。しかし、資本主義の理念から行くとこうなって当然だ、ともいえます。たとえ、順調に再建していてもそういう要因で巻き込まれることもある。これが本来の資本主義なのかなと、いえなくもないです。しかしモラルハザードはここから発生します。当の金融機関はさっさと国有化され、不良債権を処理した後再生され、民間に売却されて万事終了。これは、破綻処理ではなくて、再生処理でしょう。そうなると、その犠牲になった取引先企業は本当にやりきれない思いです。金融機関というものは、それほどに重要で、一般企業というものは、どうでもいいという態度を表明されたようなもので、これはモラルハザード以外の何者でもありません。影響が大きかろうが少なかろうが厳然とルールにのっとって運営すると言うのが、自由主義の建前であって、自己責任が基本的なルールのはずでしょう。こういうことが繰り返されれば、当然のことながら社会のモラルは荒れてゆきます。
現在、アメリカではサブプライムローンの延滞率は約20%にものぼり、プライムローンでさえも約5%以上であるといいいます。今後ますます悪化してくるでしょう。同時に、失業率も鰻上りの状況で、経済は完全に後退局面です。その中で現政権(ブッシュ政権)は、暫定的な救済を行って、後はオバマ新政権に委ねようということですが、オバマ新政権の構想は新・ニューディール政策であり、膨大な「ばら撒き」を中心とした懐古的な経済政策によってこの局面を脱しようとしています。ビッグスリーの救済問題も今後、その枠組みの一環として議論されるのでしょうが、果たして上手くいくのでしょうか?少々、というかかなり疑問を感じます。
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December
06
2008
今夜NHKで「裁判員制度」の特番を見ました。ある日突然(のように)降って湧いたようなこの制度の導入に、国民の多くは戸惑っています。「国民の司法参加は世界の趨勢だから・・」という導入側の意見も飛び出して、なかなか紛糾した意見の応酬が行われていましたが、やはり国民の立場としてまず最初に納得できないことは、この制度の導入理由が上手く国民に説明されていないことで導入直前のいま、国民のコンセンサスが得られていないことだと思います。
考えてみると三権のうち、立法と行政は曲がりなりにも選挙という形で国民参加していることになっていますので、司法への関与はもっと積極的に行っていかなくてはいけないし、そもそもそれこそが国民の権利であると思います。総選挙の時に行われる最高裁判事の信任投票だけでは、いかにも方手落ちというもので、何か方法論を模索しなくてはいけない時期にさしかかっていると思います。しかし、いつもの事ながら、国民に対して詳細な導入事由を説明する配慮なくして、国会で決議され導入されることに不快感が有ります。現実問題として、司法の事情もあります。長引く裁判は基本的に判事(裁判官)が複数の事件を常に抱えつづけることになり、その負担は膨大であること、警察の強引な捜査や調書による冤罪が増加したこと、長引く裁判による費用増大もまた理由の一つであるということです。どう公平に判断したところで我々国民の目には、判事と検察の距離が近すぎるように思えますし、裁判の決め手となる捜査実体や証拠となると検察が圧倒的に有利な立場であり、その部分では弁護側は残念ながら太刀打ちできないでしょう。裁判というものは、被告人は無罪であるという視点から始められ、検察側の証拠によって徐々に有罪の可能性を強めるように審議されるものと言うのが司法の常識のようですが、捜査権をもつ検察がイニシアティブを取ることは否定しようがないでしょう。そこで、検察、判事、弁護士の司法改革の妥協案として「諸外国のように裁判員制度を導入する」ということになったようです。
実際に、裁判員制度を導入することで、司法改革ができるのか?という問題は「やってみなければわからない」と言うのが正直なところでしょう。しかし権威を守るためなのかどうなのかは定かでは有りませんが、導入手続きにおいて、国民の皆さんに助けていただきたいと正直に言ってしまえば、良かったと思います。監査役にお聞きしたところシステムとしては非常に良く出来ている制度だそうで、予想以上に上手くゆく可能性が高いということです。
しかし現実には凶悪事件の有罪・無罪の判定と量刑の決定と言うのは重い仕事に成りますね。守秘義務も当然科せられる訳でそのことも非常に苦しいと思います。それは確かです。しかし、国民として社会を作る、守るという観点から、いえば司法への参加は必要なことだと思います。特に現代社会のように全て役割分担で、ということが進むと包括的な意見を反映させねばならない場合でも、一部の意見しか反映されないで事が進行してしまうということになりがちですからね。長い人生の中で、重荷を背負う場面が有っても義務として甘んじて受けるべきなのかもしれないですね。
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December
05
2008
去年まで空前の好景気に沸いた自動車産業で、派遣社員切りが非常に顕著化しています。他の大企業も派遣社員を解雇することで人件費節約に懸命、そしてその傾向は中小企業も同じだと思います。しかし、僕は思いますが、どうしてそういう決断がさっさと出来てしまうのだろうと不思議で仕方ないです。「企業は人なり」なんて日頃は偉そうに薀蓄を垂れていた経営者が、ひとたび景気が悪くなると、さっさとその企業の命であるはずの「人員削減」に乗り出すという選択。こんなこと理解しろといっても到底無理な話です。
そもそも派遣社員の増加そのものがまったく理解できない経緯でここまで来ています。小泉内閣時代に規制緩和という名の下に、この当たりの規制は大幅に緩和され、人材派遣会社全盛の時代を迎えました。正社員を雇用するよりも人件費が安いという理由で、派遣社員は大いに重宝がられました。たとえばシャープの有名な亀山工場。個々などはもう大半のライン従事者は派遣社員です。内容を聞いて僕もびっくりしましたけれど。それからあのトヨタなども膨大な人数の派遣社員を雇用しています。しかも取引先業者などは「派遣社員を雇用しなければペイできない部品コスト」を提示されるわけで、当然雇用しますよね。だから、人材派遣への需要は過去10年間鰻上りでした。
「労働のバリエーションが増える」「ニートを吸収できる」「終身雇用の時代は終わった」等々いろいろ理由が付けられましたが、結局企業側で人件費を抑えたいという目的以外の何者でもないでしょう。そうしないと価格競争力が出ないというのももっともらしい理由の一つです。しかし、こういうことが社会の格差を生み出しているし、勝ち組、負け組みなどという恐ろしい表現を助長しているわけです。ならば、どうしてワークシェアリングという方向へ進まなかったのか。給与は少なくなっても全体雇用を確保する方法を模索することが如何に重要であるかが、今になってわかってきています。
派遣社員の問題は雇用だけではなくて、派遣会社の姿勢にも大いに問題があります。実際に派遣会社は企業契約報酬のなかから自社の利益(経費等も含む)を先取りして報酬契約を結びます。しかしこの率も法的規制が無いわけで、これでは派遣社員の方の報酬の伸びは、売り手市場の場合のみしか期待できないことになります。現在のような状況になれば、給与の上昇などまったく考えられないでしょう。そしてそれは、景気が少々上向いても変わることはないでしょう。
僕は、派遣社員の雇用は基本的にいままで経験がありません。社員の皆さんには、自社の製品や仕事に思い入れを感じて欲しいと常に考えていたからです。そういう気持ちがないと、「いいもの」は作れない・・・少々考え方は古いかも知れませんが、ハードでもソフトでも「ものづくり」というのはそういうものだと思っています。現在のように苦しい状況になれば、まずは「ワークシェアリング」を導入すべきで、相対的な給与配分を減じる代わりに全体雇用を如何に確保するかをまず真剣に考えたほうがいいと思います。「企業は人」であると本当に思っているのなら、「人材の使い捨て」は、どうかと思いますけれど。
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