賠償請求が棄却され、険しい表情で判決内容を聞く原告の支援者ら=8日午前10時27分、京都市中京区の京都弁護士会館
内閣府と京都市が05年に開いたタウンミーティング(TM)で主催者側が特定の応募者を排除したため、発言の機会を奪われ、表現の自由を侵害されたとして、同市内などに住む男女4人が国と市に計800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が8日、京都地裁であった。吉川慎一裁判長は「作為的な抽選は公務の執行に対する信頼を損なったが、TMに参加する権利は法的保護に値するとは言えない」と述べ、請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
訴えたのは京都市左京区の大学職員蒔田直子さん(54)と、夫で中学教諭の朴洪奎(パク・ホンギュ)さん(56)ら。このTMは05年11月に同市内で開かれ、文部科学相らが出席し、小中高校生と保護者ら144人が参加した。
判決によると、内閣府は応募者が多数だとして受付番号の末尾の数字を使って参加者を決める抽選を行った。この際、原告2人の末尾数字を落選対象に設定。同じ末尾番号の人らとともに落選させた。
判決は、内閣府が、このTM以前に京都市教委が主催したイベントで蒔田さんが所属する団体関係者がプラカードを掲げて大声を上げたことがあることなどを踏まえ、蒔田さんらを落選させたと認定。「市教委や内閣府の担当者が原告らを落選させた目的自体は正当なものといえ、憲法が想定するような不合理な差別が行われたと言うことはできない」などと述べた。
裁判で原告側は「不正な抽選で発言機会を奪ったことは憲法が保障する平等権や表現の自由などを侵害する」などと主張していた。
TMをめぐっては、内閣府が質問する参加者や内容を事前に決めて依頼していたことなどが問題になり、政府が調査委員会を設置。調査報告書で、蒔田さんらに対する作為的な抽選行為が明らかになっていた。(佐藤達弥)