◎インフル流行の兆し 旧型への備えも怠りなく
インフルエンザ患者の報告数が例年よりも早い時期に急増していることが、国立感染症
研究所のまとめで分かった。石川、富山両県でも第四十八週(十一月二十四―三十日)から患者数増加の兆しが見え始めている。最近は、大流行すれば多数の死者が出る恐れがあるとされる新型インフルエンザ対策の方に関心が集まっているが、旧型も、特に高齢者にとっては侮ることができない病気である。ワクチンを接種するなどして本格的な流行に備えておきたい。
昨年度、六十五歳以上の高齢者のワクチン接種率は石川が63・1%、富山が65・4
%だった。厚生労働省によると、全国の接種率は48・3%(〇六年度)であり、両県の数字は決して悪くはないものの、それでも十人のうち三、四人は接種していないわけだ。「年の割に元気だから」などと過信せずに、自分の健康は自分で守るという意識を強く持ってほしい。
ワクチンには、かかった時の症状を軽くする効果もあると言われる。ワクチンを接種せ
ずにインフルエンザにかかって亡くなった高齢者の八割は、接種していれば助かっていたという調査結果も報告されている。抵抗力がつくまでには約二週間かかるので、そろそろ接種しなければ流行のピークに間に合わなくなる。高齢者の接種費用については公費助成制度があり、石川、富山では高くても千数百円の自己負担で済むのだから、かかりつけ医らとも相談して積極的に接種を考えてもらいたい。
もちろん、流行するインフルエンザの型などによっては、ワクチンの効果が十分に現れ
ないケースがあることも理解しておく必要がある。流行したら▽なるべく人込みを避ける▽外出時にはマスクを着用する▽うがいや手洗いを励行する▽室内では適度な湿度を保つ―などといった自己防衛策を心掛けることも大切である。
また、小児がインフルエンザにかかると、まれにではあるものの、急性脳症を起こして
死亡したり後遺症が残ったりすることがあり、要注意である。小児のいる家庭でも、早めに警戒レベルを上げておきたい。
◎手ごわいオバマ政権 日本軽視を警戒せねば
来年一月に発足するオバマ次期米政権の骨格が固まった。外交を担う国務長官に大統領
候補指名を激しく争ったヒラリー・クリントン上院議員を据え、国家安全保障問題担当の大統領補佐官に共和党大統領候補ジョン・マケイン上院議員に近いといわれるジェームズ・ジョーンズ元海兵隊総司令官を起用し、ロバート・ゲイツ国防長官を留任させるなど挙国一致の重厚な布陣である。が、中国重視の色合いの濃い政権だ。日本軽視を警戒したい。
というのも、ヒラリー次期国務長官は昨年末、米国の外交評論誌「フォーリン・アフェ
アーズ」に寄稿した外交構想の論文で米中関係を世界で最も重要な二国間関係と位置づけ「中国を地球規模の枠組みに取り込むことが重要だ」と米中協調の必要を訴えているからだ。その後「日米関係は、アジア太平洋地域における二十一世紀の不可欠な基礎」と言い直したが、中国をステークホルダー(利害関係者)と規定したブッシュ現政権よりもずっと中国寄りだ。
米議会の超党派政策諮問機関が先に発表した二〇〇八年度の年次報告書で、中国の為替
レートの不当操作、環境汚染の拡大、外国の知的所有権の侵害、国際法を自国に有利に曲げて解釈し海洋で「法戦争」を体系的に続けている等々を指摘した。これを受けた形で、五回目の米中戦略対話が北京で行われ、中国側代表の王岐山副首相は冒頭で米国に経済安定へ必要な措置を取るよう求め、中国が米国に投資した資産の安全確保を要求した。今や中国は米国債を最も多く所有しており、債権国として注文したのだった。
米国に対して中国に次ぐ債権国の日本がそのような要求をしたとは寡聞にして聞いてい
ない。オバマ氏が大統領選を制したとき、私たちは新政権に対して日米安保条約を堅持しながら、自らの考えを明確に伝える自主性を持って臨み、両国の関係を深化させたいと主張した。オバマ政権はどうやって中国を枠組みに取り込むのか知りたいものだが、日本がエサをやる必要がない釣った魚にされてはたまらない。