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2008年12月8日

 ことしの司馬遼太郎賞に、原武史氏の「昭和天皇」(岩波書店)が選ばれた。ジャーナリスト出身で近現代皇室史研究で知られる人である

前作「大正天皇」では、皇太子時代の大正天皇が金沢で民間人と交わした会見記事(北國新聞・明治42年9月29日付)を引用して生き生きとした天皇像を描き、富山市呉羽山の大正天皇詩碑を紹介するなど、地方史も丹念に掘り起こした

原氏の研究で注目されたものに天皇家の祭祀(さいし)がある。皇室には年間を通して数多くの祭祀があり、新嘗(にいなめ)祭など天皇自らが夜を徹して祈るものも少なくない。こうした体力と精神力を必要とする行事の側面から「女帝論争」に一石を投じたのである

折しも、今月23日で75歳となる天皇が不整脈と診断された。深刻な状態ではなく、体調は落ち着いているとのことでひと安心だが、賓客との会見や祭事を見直す声も出始めている

年齢を考えれば公務の多さだけが問題とは言えないだろうが、公務の整理と休養が必要なのかもしれない。皇室の未来像を一部の研究者任せにしない多方面からの論議がおきることを期待したい。


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