Jリーグ最終節、僕は京都サンガFC対清水エスパルスという、優勝争いとも残留争いとも関係のないカードを観戦してきた。関西大学での仕事があり、当日の昼まで大阪にいたのでこのカードを選択せざるを得ない状況だったのだ。
「ううん、こんなカードならスタジアムも空いているに違いない」と思って、阪急の西京極駅に着いたらボランティア人が「入場券は完売となりました」と叫んでいるではないか!入場者数は17331人。ほぼ満員である。第34節は8試合で23万人もの人が観戦に訪れ、2008年のJ1は全部で590万人の人が観戦。1試合平均も1万9000人を超えた。「日本代表には人が集まらなくなっても、Jリーグは安泰だ」とまず一安心である。
試合は清水の一方的な内容。京都は、この試合が100試合出場となる水本裕貴をはじめ、増嶋竜也、手島和希、シジクレイなど、守備の好選手がそろっている割にディフェンスが甘く、前半などはワンサイドゲーム。清水は左サイドから攻めて右に大きくサイドチェンジ。そして、右の兵働昭弘がパスやクロスを入れるといった、そんな攻めが開始早々から続いた。もっとも、清水も決定的なチャンスをはずして続けていて、「これはヤバいかな?」と思っていたのだが、37分に、その右クロスからの混戦で矢島が押し込んで先制すると、38分にも追加点。後半、ようやく京都が目が覚めて互角の試合になったが、結局3-1で清水が快勝。京都は、せっかくの満員の観客の前で気のぬけたような試合をしてしまった。1点を返した柳沢だけが目立ったような試合だった。
なお、現在は京都に所属している元日本代表の森岡隆三選手がこの試合で引退ということで、試合終了後にはセレモニーも行われた。古巣である清水との試合が引退試合になったのは良かったのだが、3点を先行された試合展開では、加藤久監督も森岡を出場させるわけにもいかず、それが心残りの引退試合だった。
この試合と同時に行われた7試合で、優勝と残留争いが決まった。ジェフユナイテッド千葉の大逆転残留は劇的だったようだが、優勝争いは鹿島アントラーズが最下位のコンサドーレ札幌に1-0で手堅く勝っての優勝決定だった。鹿島は、じつに手堅く、結局ライバルと目された浦和レッズやガンバ大阪が脱落して「転がり込んだ感」のある優勝だった。もちろん、鹿島はよくまとまったチームだったし、マルキーニョスもすっかりチームにフィットして得点王となり、興梠も成長と文句をつけるところはない優勝だった。しかも、大黒柱だった小笠原の長期離脱という中で、チーム力を落とすことなく勝ち抜いたのはたいしたものだ。だが、どうも今年はライバルたちの自滅の方が目立ってしまったシーズンとなった(これは、鹿島にとって不運と言うべきか?)。
浦和レッズは、まさに自滅だろう。
選手たちは、昨年のACL優勝で自信がついたのか、ビッグクラブと持てはやされたせいか、スター気取りで監督の采配に注文を付ける。開幕直後に昇格したエンゲルス監督は、好人物ではあるが、そうした選手たちの“造反”を抑えきるだけの威厳あるいは指導力にかけていた。
しかし、このクラブの問題はもっと上層部に求めるべきだろう。
昨シーズンもオジェック監督に対しての選手の不満が散々聞かれていながら何の手も打たずオジェックを留任させておいて、開幕直後に2連敗しただけであっさりとオジェックを解任。内部昇格の形でエンゲルスを監督に据えた。そして、終盤、エンゲルス監督に対する批判や不満の声が上がっても、何の手も打たず、それでいて最後はまだJリーグ3位という最終目標に可能性が残っていた段階でエンゲルス解任を発表したわけだ。まさに「大混乱」と言うべきだろう。今回は、さすがに、次期監督やGMの用意も手回し良くすませた浦和レッズだが、簡単にしこりが取り除けるのだろうか?日本でも圧倒的な観客動員を誇るビッグクラブ候補ナンバーワンとして、もう少ししっかりしてほしいものだ。最終節でも、横浜F・マリノスに大敗したが、それも「いい薬」と思って受け止めてほしい。
一方、最強の攻撃力を誇るガンバ大阪も低迷してしまった。
こちらは、チーム作りの段階で、東アジア選手権の日本代表に6人もの選手を招集され、さらにハワイでの国際大会に駆り出されたりで、準備の整わないままシーズンに突入。その後も、夏場には中心選手である遠藤保仁が病気で欠場。ようやく出直そうかという時期にバレーが中東に引き抜かれと、結局、チームがそろわなかった。そういう事情もいろいろあったし、ACLでも見事にアウェー全勝というすばらしい成績で優勝を飾ったのだから一応及第点とはしても、やはりG大阪の低迷は寂しかった。
代わりに、「眠れるシャチ」名古屋グランパスが眠りから覚めて、最後まで優勝争いに加わった。サッカーの内容も良く、ストイコビッチ監督の采配も理に叶ったもので、いいチームではあったが、マギヌンが欠場したりでやや失速し、最後は鹿島に届かなかった。優勝争いを経験しただけに、来シーズンは選手たちも「勝ちたい」という意欲も増すだろう。来年が楽しみである。
そして、もう1チーム特筆するとすれば、ナビスコカップで初タイトルを獲得した大分トリニータ。少ない予算と戦力を駆使して、組織的な守備からのカウンターというスタイルを確立した。このオフにも主力が抜かれる可能性もあるが、最大の戦力シャムスカ監督さえ留任すれば、「プロビンチャの雄」として来年に期待できるだろう。こうしたチームに加えて、抜群の攻撃力で3位に入った川崎フロンターレなどもいたが、結局、鹿島を追うのはリーグ優勝経験のないチームばかりで、最終的にはその経験の差のようなものが、勝負を分けたような気がする。
来シーズンには、そうした今季初めて優勝争いを経験したチームが自信を深め、ビッグクラブ候補である浦和やG大阪が優勝戦線に復帰して、今シーズンよりレベルの高い混戦となるように期待したい。
後藤 健生 12月07日07:50
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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