ここから本文エリア 私は好き 男も女も 性的少数者・北口さん2008年12月08日
私は男性も女性も愛する――。吹田市に住む会社員、北口麻美さん(22)は両性愛者といわれる性的少数者だ。北口さんは訴える。偏見や差別に苦しむ同じ立場の人たちに、そして多数派である異性愛者に向けて。「相手が同性でも異性でも、人が人を愛することに違いはありますか」 高校1年の2学期だった。女の子に初めて恋をした。席替えで隣になり、毎日会話するうちに好きになっていた。「本当に自然だったんです。夏休みまで私には彼氏がいて、今度はたまたま相手が女の子だったという感じ」。思い切って告白したが、答えは「ムリ」。「なんで」「人としては好きなんだけど……」 自分が女性だからだめなのか。やりきれなかった。「恋愛した瞬間、失恋が始まる。なぜ自分は女なのかと悩みました」。そして思った。「同性愛者が差別される話をよく耳にする。私も差別される存在なのか」。授業どころではない日々が続いた。 その頃、性的少数者について書かれた本に手を伸ばした。そこには自分と同じように悩む人の姿が描かれていた。「多様性はあっていいんや」とほっとした。同時に「多様性について伝えていきたい」という思いが沸々とわいてきた。 高校3年の「倫理」の授業で、自分の意見を自由に発表できる機会を与えられた。普段のミニスカートの代わりに男子生徒のズボンをはいて前に出た。「私は男性も女性も好きになる」。初めて大勢の人の前で告白した。教室は誰もいなくなったように静まりかえった。その後、拍手が起こった。 「生活は変わりませんでした。私を同性愛者である前に、純粋に友達として見ていてくれたからかな」。ただ、母に言うのはためらった。友人から無視され、ストレスで髪の毛が半分抜けた小学生のころも、ケンカで顔を腫らせた中学生のころも、母は私を見守ってきてくれた。「裏切ることになるんかな。泣くやろな」。休日の昼間、居間にいた母に声をかけた。「言いたいことあるねん。私、女が好き」。母は笑って言った。「好きな人が男でも女でも、あんたが幸せやったらそれでいい。恋人できたら家に連れといで」。涙がこぼれた。 しかし、思いがすべて受け入れられるわけではない。数年前、大好きだった女性に振られた。生きていることがつらくて、酒と抗うつ剤を大量に飲んだ。自宅で気を失い、倒れているところを母に発見され、救助された。回復するまで、母と友人は根気強くそばにいてくれた。 今年10月、北口さんは大阪の御堂筋を仲間たちと練り歩いていた。性的少数者が存在をアピールする「関西レインボーパレード」の共同代表として。堂々と社会に存在を訴える自分の行動に、迷いはない。これまでありのままの自分を認めてくれる母や友人に救われてきたから、今度は自分が同じ悩みを持つ人の力になれば、と思っている。「人が人を好きになるのは誰でも同じ。否定することではないんです」
マイタウン大阪
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