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呉の産科病診連携 安心への仕組み充実を '08/12/8

 身近なクリニック(診療所)で妊娠中の健康管理をしてもらい、産むときにはスタッフや設備の整った公的病院の産科で―。そんな役割分担に、呉市では今春から取り組んでいる。

 安心して赤ちゃんが産める仕組みづくりは、中国地方のどこでも大きな課題だ。一歩踏み出した市域全体での病診連携を、より充実させながら、さらに広げたい。

 呉市での仕組みはこうだ。

 妊娠して八、九カ月までの期間、健診を受けたり、相談をしたりするのは市内に九カ所ある開業医のクリニック。夕方まで受け付けてもらえるから、気軽にかかれる。待ち時間も短くて済む。

 出産する病院は、呉医療センター、中国労災病院のどちらかをあらかじめ選んでおく。予約はクリニックに取ってもらう。もし何かあれば、早い段階でも病院に診てもらえるから安心できる。

 クリニックは分娩(ぶんべん)にはタッチしない。病院側も、臨月が近づく段階までは、健康管理にはかかわらない。その分、人手を割かずに済み、それでなくても不足がちな医師や助産師らの負担が軽くなるメリットがある。

 呉市では、集約化で今春から出産できる病院が三カ所から二カ所になっただけに、周辺から搬送される妊婦にも対応を迫られる。年間千八百件ものお産を引き受けることになった。

 こうした中で、日ごろの健診が減れば、その分、リスクの高い妊婦に十分な時間を取ることができる。連携がスタートした本年度中に二病院が扱う分娩のうち、七―八割は、診療所で健診を受けた人たちになりそうだ、という。

 呉市ではなぜ、こうした連携が可能になったのだろうか。

 下地になる情報のやりとりなどは、ほぼ二十年前からあったと指摘する医師もいる。病院の医師から開業した人が近くにいて、都市部の割に人間関係が密接な地域性が幸いしたようだ。

 もちろん、妊婦の側からは、健診と出産の施設が違うことでの戸惑いもあろう。仕組みを理解してもらえるよう、保健センターなどでの十分な説明が欠かせない。

 病院と診療所が、それぞれの妊婦についての情報を、きちんと共有することも大切だ。そこで考えられているのが「共通診療ノート」である。

 ノートには、病歴や出産歴、これまでの検査データなどを記録。それぞれの妊婦が、自分のカルテを持ち歩くような形だ。緊急時にも、データがあればスムーズに対応しやすくなる。先進地である仙台市でのアイデアを参考に、本年度中には出来上がる予定だ。

 検査などについての最新の技術を学び合うことも必要だろう。スタッフ同士のつながりをどう広げていくか。実際にお産をした女性たちの声を聴くなど、フォローの体制も求められる。

 他の地域も、お産をめぐる状況は深刻さを増している。どうすれば安心できる仕組みができるか、実情に合わせ知恵を絞りたい。

【写真説明】母子手帳交付の際、病診連携の仕組みを妊婦(右)に説明する保健師(呉市の西保健センター)




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