岡谷市は、内視鏡手術の熟練医師を養成する内視鏡用処置具研修センター(仮称)の設置を起爆剤として、地域産業の振興や医師確保を含むまちづくりへの模索を始めている。来年1月中には勉強会を発足させる予定。同市は、内視鏡技術を使った医療は多方面に波及効果がある希望分野ととらえ、広域連携や医療連携、企業連携、大学連携も視野に入れ、センター設置の可能性を探り始めている。
市の動きは、同市で30年前から内視鏡用処置具の開発製造に携わり、数々の特許技術を持つ企業の提案がきっかけ。全国的には複数科目にわたる内視鏡手術の普及率はまだ低く、トレーニング受講希望を持つ医師や指導可能な医師要望を同社が取りまとめていることから、一企業への支援ではなく、まちづくり全体の中で活用する可能性の検討を始めた。
新病院建設や産業振興の課題を持つ同市には、施設設置で全国から研修医が集まることが、地域の病院に対するインパクトになり、医師確保の要素となるという思いがある。同時に、施設で使用する機器類の改良や試作、最新機器などの開発製造が地域企業に関与することにも期待を寄せる。
施設設置には建設資金や運営方法、運営経費、既存メーカーとの調整などさまざまな課題が考えられるため、勉強会では当面、岡谷市産業振興戦略室が中心となり、設置への課題を整理する。他自治体との連携も図る。その上で医療や企業など専門性のある関係者の参画を求め、設置への具体的な可能性が見えた時点で組織の形を変えて次の段階に進む方針。
先端にレンズのついた管を体内に通す内視鏡の技術は光学、エレクトロニクス、材質開発、情報システムなどさまざまな先端技術が集積され、進化している。病気の早期発見や検査、治療手段として使われる医療分野だけでなく、建設現場や災害現場などの分野でも活用されている。
同市産業振興担当の宮沢昇副市長は「医療はこれから伸びる分野であり、医療技術を岡谷の技術として大切にしていきたい。医療界で活躍している企業がさらに成長するために、市としても応援する。研修センターは無から生む話であり、どんなものになっていくのか、いろいろ知恵を出して前向きに勉強したい」と話している。