● 精子だけがあれば、卵子も出来る:メスはいらない?


 生殖には、オスの精子とメスの卵子が巡り合う、受精という過程が必要です。

 ところが今回、この子孫を作るにはメスの卵子は特に必要なく、精子があれば卵子も作れ、オスだけで生殖が完成するという、神様が聞いたらちょっと問題となる話題です。

 ニジマスの精子のもとになる細胞をメスの稚魚に注入すると、その細胞は卵子に成長することを東京海洋大吉崎助教授らのグループが見出したもので、米科学アカデミー紀要(Proceeding of National Academy of Science, PNAS, 2006, Jan. 7)に報告されています。

 研究では、オスの精巣から精子の元となる精原細胞を取り出し、メスのニジマス稚魚の腹部に注入しました。
 すると7カ月後には、このメスの体内に卵子のもとになる細胞が現れ、この精原細胞の遺伝子を持つ稚魚が生まれました。
 更に、この精原細胞をオスの稚魚に注入したところ、この精原細胞から精子ができることも確認できたそうです。

 吉崎助教授によると、精原細胞は凍結保存が可能なため、例えば絶滅が心配される種の精原細胞をあらかじめ凍結しておき、近縁種に移植すれば卵子も精子も作れ、絶滅種の復活も可能という事です。

 更に一匹のニジマスの精原細胞を使って、ヤマメからニジマスを生ませることにも成功したそうで、現在、米国や台湾で絶滅の危機にあるサケを保存するための研究も行っているそうです。

 こうなると、魚類だけでなく、ヒトを含めた哺乳類はどうなの?という疑問が生じますが、専門家によると、性を決める遺伝子は魚類とほ乳類では異なるため、ほ乳類にそのまま応用できるとは考えにくいとのことです。

 オスだけの社会は味気ないですので、やはり人類には適用されない事を祈ります。



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