県内の小中学校と高校の児童、生徒が二〇〇七年度に校内で起こした暴力行為の件数が前年度より大幅に増え、特に中学生の暴力行為が千百二十二件と、約八割増えたことが文部科学省の調査で明らかになった。急増の背景に何があるのか。大人は多感な子どもたちにどう対応したらいいのか−。県内の多くの子どもたちの心の問題と向き合っている臨床心理士の田村節子さん(53)に聞いた。 (聞き手・伊東浩一)
−中学生を中心とする暴力行為の増加をどう分析するか
特定の生徒が周囲の数人の生徒を巻き込んで、継続的な暴力行為に及んだために数字が突出したのではないか。私の実感では、例えば、百人が一件ずつやって増えたような現象とは考えにくい。思春期には一人が周囲を巻き込んで、教諭や周りとの対立の構図がどんどんエスカレートすることが起きやすい。
充足感が得られない子どもたちは、なかなか思っている不満を言葉でうまく表現できず、暴力行為に走ったり、逆に自傷行為に向かったりする。大人に怒ってもらうことで自分が見捨てられていないことを確認するため、問題行動を起こすこともあり得る。
まだ暴力行為という形でもSOSを出せる子はいい。SOSを出せないまま、大変な思いを抱えて大人になると、何かがきっかけで昨今起きているような事件に結び付くこともあり得る。
何もかも学校と家庭だけで解決しようとすると、どちらもいっぱいいっぱいになってしまう。専門機関を含め第三者がサポートしていかないと。
まずは大人が子どもたちに今、何が起きていて、その背景に何があるのかを知るという情報収集努力が重要。でも大人たちは成果主義や効率優先社会で仕事に疲れ、しっかり子どもと向き合う余裕がなくなりつつある。
せめて周囲の大人たちが子どもたちのマイナスの感情をしっかり受け止めるとともに、良い点は褒めてあげるなど存在を認めてあげることは、暴力行為を減らす一助になると思う。
田村節子(たむら・せつこ) 筑波大大学院教育研究科修了。現在、公立小中学校のスクールカウンセラー。医療法人たむら小児科クリニックカウンセラー。学校心理士。臨床心理士。水戸市在住。
<文部科学省の児童生徒の問題行動調査> 2007年度に県内の中学校の生徒が校内で起こした暴力行為は1122件で、前年度の約1.8倍に増えた。このうち器物損壊が最も多く539件。続いて生徒間暴力444件、対教師暴力135件など。小中学校、高校の合計でも前年度の約1.5倍の1417件あった。加害児童生徒数を学年別にみると、中学3年生が466人で最も多く、全体の約3割を占めている。一方、いじめの認知件数は小中学校、高校の合計が2834件で、前年度より637件少なかった。
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