「裁判を起こさないと助けてくれないのか」--。在韓被爆者計388人が国に損害賠償を求めて長崎など3地裁に提訴した5日、原告らは在外被爆者を積極的に救済しない日本政府の姿勢に怒りの声を上げた。【錦織祐一、下原知広】
原告で韓国原爆被害者協会慶南支部長の成性柱(ソンソンジュ)さん(76)=晋州市=は、広島市の爆心地から約2キロで被爆し、左耳の下にはガラス片の傷が残る。被爆者健康手帳は96年に取得したが、03年に旧厚生省通達が廃止されるまで健康管理手当は1度も支給されなかった。
成さんは「お金の問題ではない。日本政府は一度も謝罪してくれなかった。裁判を通じ謝罪を求めたい」。
在韓被爆者は平均年齢74歳と、日本の被爆者同様に高齢化が進んでいる。金龍吉(キムヨンギル)同協会長(67)は「一日も早く日本の被爆者と同じ待遇を与えてほしい。税金を使って無駄な裁判をする日本政府はおかしい」と疑問を呈した。
弁護団の在間秀和弁護士は、カナダ政府が88年、戦時中に強制収容した日本人に補償した際、日本国内にも窓口を設けた例を挙げ「日本政府も被爆者を探し出すべきなのに『そちらから訴えて』と放り出した。あまりにひどい」と批判した。
〔長崎版〕
毎日新聞 2008年12月6日 地方版