以前、軍隊生活を終えたばかりの韓国人から直接聞いた話を紹介しよう。
韓国の男性は軍隊に入隊するとき、ほとんど自動的に陸軍に入隊するらしいが、彼は自ら海軍を選んだ。理由を聞いたら、「陸軍より楽そうだから」。(人によっては海軍が一番きついという人もいるのでよく分からないが、服務期間は陸軍より海軍の方が長い)
彼が配属されたのは釜山、海水浴で有名な海雲台ビーチの近くの部隊だった。一定の基本訓練を終えたあと、彼の本格的な軍隊生活が始まった。
朝食の後、私服に着替え、上官から何千ウォンかの支給を受け(昼飯の代金)、海雲台に出かける。海雲台に行っても何もすることはない。暗くなったら部隊に戻る。それが日課の全てだった。
どうして海雲台に行くのか、彼は説明をしたかも知れないが、当時の私は、それを聞き取るだけの会話能力が足りなかった。想像するに、彼は北朝鮮の間諜(スパイ)の見張り役だったかも知れない。
おそらく彼は何もすることはなかっただろう。だって、誰かにすぐ分かるような間諜は間諜の資格がないものね。
彼にできることは、海雲台にやって来た人々を眺めることしかなかった。そして気づいた。色々な人間が海雲台にやって来ることを。そして彼の関心はもっぱら一人で来た若い女性に向いた。彼女たちの物憂げな表情や身のこなしを見ているうちに、女性経験の少ない彼も、彼女たちが失恋の傷を癒すために海雲台に来たことを悟ったという。
彼は、自分でも知らず知らず、彼女たちに積極的に声をかけるようになった。得意の決まり文句は、

アガシ オディソ ワッソヨ(彼女、どこから来たの?)。
そして彼が除隊までに一夜を共にした女性の数は、両手の指だけでは足りないと自慢した。
彼は最後に私に言った。
「みんな軍隊生活は地獄だと言うけれど、俺にとっては本当に天国だった」
「海雲台に行くんだったら、夏に行くよりも冬がいいよ」
