●高額放映権料が足かせ
「もしかしたら、近い将来メジャー中継が日本のテレビから消える可能性がある」
テレビ業界内の一部では今、こんな話が囁かれている。民放2社(フジテレビ、TBS)がMLBの放映権を手放すというウワサがあるからだ。
メジャーリーグでは現在、多数の日本人選手が活躍。今オフも上原や田沢など、海を渡る日本人選手は後を絶たない。そんな状況下でなぜ、放映権を手放すというのだろうか。テレビ関係者はこう指摘する。
「日本の放映権は、大手広告代理店が2004年にMLBから6年間約275億円で契約。その大半をNHK、TBS、フジテレビの3社が共同で購入しています。この金額が足かせなのです。全30球団中、14球団の本拠地放映権を持つNHKが04年以前は年間約17億円、現在は年間20億円程度、民放側も2社で年間計10億円以上を負担している。にもかかわらず、視聴率が悪く『費用対効果』が期待できないのです」
●好カードでも視聴率はたった3%
メジャーの主な試合開始時間は時差の関係で日本時間の深夜か午前8時頃。圧倒的に多いのは午前中だ。この時間帯の視聴者は「主婦」が大半。野球より情報番組を視聴する傾向がある。中継は見向きもされないのが現状だ。
「大リーグの平均視聴率は好カードでも3%程度。ただでさえ景気が悪くなっている状況でこの数字ではCMも取りづらい。民放はデジタル化に伴って開局したBSでコンテンツを生かそうと考えていたようですが、視聴率は1%に満たないこともある。それで各局が見直しを始めたのでしょう」(在京テレビ局関係者)
それなら「視聴率に関係なく放送できるNHKが独占放送すればどうか」と野球ファンは思うはずだが、事はそう簡単ではないとNHKの事情に詳しい関係者は背景をこう説明する。
「NHKは受信料を徴収しているため、番組を放送するにあたり公共性を重視する必要があるのです。現在のMLB放映権は『民放との共同購入』が大前提なので、視聴率や採算を度外視して大金もつぎ込める。しかし民放が撤退となれば、民放が見限ったメジャー中継に、果たして公共性があるのかということになりかねないのです」
さまざまなカテゴリーの意見を投票し合うインターネットサイト「センタク」が以前、「NHKは年何十億円も支払って視聴率が悪いメジャー中継をするべきか」というアンケートを行った。その時の結果は「不要」が80.3%で「必要」は8.1%にとどまっている。
こうした状況もあってか、視聴者の加入料や視聴料金で運営する「スカパー!」のスカパーJSAT株式会社は、いち早く「放送権取得期間の終了」(スカパー・カスタマーセンター)という理由で、今年12月末でMLB中継を終了する。「放送の再開は今のところ考えていない」(同センター)という。
民放2社とNHKに今後の大リーグ中継に関し問い合わせたところ「来季以降については未定、検討中としかいえない」(フジテレビ広報部)、「個別の契約内容は従来より回答を控えさせていただいている。(今後は)未定です」(TBS広報IRセンター)。
NHK広報局は、「今季、地上波では11試合を放送し、視聴率は11試合平均、関東地方で2.8%でした」と視聴率については回答を得られたが、契約内容や今後の中継予定などは、「交渉中のことなのでお答えできません」という回答だった。
(日刊ゲンダイ2008年12月4日掲載)