社 説

難病の医療費支援/国は責任を果たしていない

 パーキンソン病や潰瘍(かいよう)性大腸炎などの「難病」の医療費負担をめぐって、各県の不満が強まっている。

 治療が難しく経済的負担も重いことから、国と都道府県が折半して医療費を助成してきた。だが、財政難などを理由に国が半額の負担をしなくなった。都道府県はその分を削減するわけにいかず、肩代わりせざるを得ない状況になっている。

 財政難は多くの県も同じであり、国が一方的に負担を強いるのは理不尽だ。そもそも財源が乏しいからと言って、削減できる性格の事業でもない。国はできるだけ早く元の負担割合に戻し、制度の維持を図らなければならない。

 助成対象になっている病気は現在、45ある。難病医学研究財団のまとめによると、全国の患者数は2007年度末時点で約61万6000人。東北では宮城、福島で1万人を超え、ほかの4県が5000人から7000人台になっている。

 患者数によって各県の額は異なり、例えば約7200人の岩手では、07年度に9億9000万円の助成をした。ルール通りなら、そのうちの半分を県が持てばいい。ところが国の負担が2億8000万円にとどまっているため、不足分の2億円程度は県の持ち出しになっている。

 国の負担割合は全国的に本来の50%から30%程度に落ちており、どこの県も毎年、不足分約20%の超過負担を迫られている。患者が多い宮城は年間3億円を超えている。

 助成は1973年に「治療法の研究」や「医療費負担の軽減」を目的に始まった。当初は患者全員が自己負担なしだったが、98年に一部自己負担が導入され、現在は所得や症状も考慮して負担するように変わっている。患者からすれば、既に後退している。

 さらに国の半額負担見送りが続けば、制度そのものが危うくなる。厚生労働省は「このままでいいとは思っていない」(疾病対策課)と本来の負担割合に戻したい考えを持っているが、その一方で、患者数の増加と最近の財政難が壁になっていることも訴える。

 助成額は年々増え、全国で年間800億円から900億円に達している。国費そのものは増えているが、全体の増額に追い付かず、負担割合が下がる結果になっているという。

 しかし、だからと言って、各県に頼っていいことにはならない。仮に各県の財政がもっと危機的になり、削減せざるを得ない事態になったら困るのは患者や家族だ。

 岩手では現在、患者の30%を超える約2500人が医療費全額助成の対象になっている。こうした人たちに新たな負担を求めることはできないと思っているからこそ、頑張って超過負担している。

 例えば、症状が軽くなり、ある程度の所得もある人に応分の負担を求めるのは、やむを得ないかもしれない。しかし、本当に困っている患者らへの支援を引き下げるようなことは、決してあってはならない。
2008年12月07日日曜日