竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方

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【第26回】 2008年10月14日

グローバル化先進国・韓国

韓国に学べ!韓流ブームから韓流システムに

竹中 その結果、今日あるような大財閥がいくつも生まれました。ところが、ここには大きな問題があった。企業が巨大になればなるほど、グループ内のチェック機能が働きづらくなり、経済環境の変化に対する迅速な対応ができなくなったんです。

 結局、グループ企業に対するグループ内の金融機関の融資基準が甘くなって過剰投資が行なわれ、バブルが発生しました。それが、アジア通貨危機の大きな原因の1つになったんです。

 バブル崩壊後は、銀行が脆弱になり、財閥に依存してきた韓国経済の脆さが露呈されました。一時はIMF(国際通貨基金)の管理下に置かれ、「ワシントン・コンセンサス」というアメリカ型の経済路線をとっていたほどです。

 その後は、方針を何度か修正したりしながら経済が回復してきましたが、盧武鉉政権までのやり方では限界があった。そこで今こそ、市場経済に基づく健全な経済システムを構築して、国を強くしようとしているわけです。

今や日本を凌ぐ韓国企業
サムスンの時価総額は日系大企業の2社分!

上田 なるほど。日本ではバブル崩壊後の「失われた10年」に不良債権処理がうまく進みませんでしたが、韓国はどうだったんでしょうか?

竹中 通貨危機後に韓国がやったことはいくつかありましたが、最も評価すべきは、比較的短期間で「不良債権処理」を終わらせたことでしょう。

 もう1つ忘れてならないのは、「グローバル企業の育成に成功した」こと。中国や台湾と同様、ずっと日本の背中を追いかけているイメージが強い韓国経済ですが、実は日本の大企業を凌ぐ勢いの韓国企業も多いんです。

 たとえば、テレビや携帯電話などの電子機械で有名な三星(サムスン)グループの株式時価総額(企業価値)は、日本のパナソニック(松下電器産業)とソニーを合わせたほど巨額。ポスコという鉄鋼会社も、日本の新日本製鐵をはるかに凌ぐ時価総額を誇っています。

 やはり、グローバル競争を意識した経済運営と、そのなかで発展した企業が、経済を支えているんですね。

 また、日本で「ヨン様フィーバー」を巻きこした「冬のソナタ」のケースからもわかるとおり、クリエイティブ産業でも世界で力を付けて来ています。考えて見れば、インターネットの普及も日本より進んでいました。経済の新たなトレンドに対応する速さや気概がズバ抜けていますね。

関連キーワード:構造改革 アジア

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執筆者プロフィル

写真:竹中平蔵

竹中平蔵
(慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長)

1951年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行に入行。ハーバード大学、ペンシルバニア大学客員研究員、大阪大学助教授、慶應義塾大学教授などを経て、01年より小泉内閣で金融担当大臣、経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣を歴任。04年から06年まで参議院議員。

写真:上田晋也

上田晋也
(タレント)

1970年生まれ。お笑いコンビ「くりぃむしちゅー」メンバー。早稲田大学教育学部中退。91年に有田哲平とコンビ結成。レギュラー出演番組多数。

この連載について

経済学者・竹中平蔵と、くりぃむしちゅーの上田晋也が、毎週楽しくわかりやすく日本の経済を解説。同名テレビ番組(BS朝日、朝日ニュースター)の一部を再構成してお届けします。

ソロス、サマーズ、マートンが語る金融危機と世界経済の行方