竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方

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【第26回】 2008年10月14日

グローバル化先進国・韓国

韓国に学べ!韓流ブームから韓流システムに

上田 そう言えば竹中さんは、確か李明博大統領の外国人助言役の1人に就任されましたよね。助言役20人のなかには、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長やサマーズ前米国財務長官など、そうそうたる面々も多いようです。今やすっかり「経済界のイチロー」ですね!

竹中 いえ、とんでもない(笑)。先日お会いした際、李明博大統領には「民営化」についてすごく熱心に尋ねられました。構造改革を実施して、政府系の大銀行や財閥企業を民営化し、経済を活性化させたいと思っているようです。

 ところで、今、韓国では李大統領の自伝がすごく売れているんですよ。これがとても面白い。李大統領は大阪生まれで、終戦直後に韓国へ帰国する際に船が難破してしまうんです。そして命からがら韓国にたどり着いて、待っていたのは極貧生活。頼み込んで授業料免除で定時制高校へ入学し、自分で働きながら大学まで行きました。

 その後、学生運動で捕まって投獄され、しばらく就職できない状況が続きましたが、最終的には大財閥の現代(ヒュンダイ)グループで、自動車部門の会長まで出世されました。

 実際お会いした李大統領は、そんな苦労をみじんも見せない笑顔に溢れたスマートな方だったので、大変感銘を受けましたよ。

上田 そうなんですか。ドラマティックですね。

奇跡の復活を遂げた韓国経済だが
「財閥勢力の拡大」という副作用も

上田 ではこのへんで、韓国経済の基礎知識をおさらいしましょうか。韓国の2007年の国民1人当たりGDPは、1万9750ドルと日本の6割弱ですが、過去10年間の推移を見るとずっと右肩上がりが続いており、アップダウンが激しい日本とは対照的です。通貨危機以降、4割も伸びているのはスゴイこと。いったいどうやってここまで復活したんでしょうか?

竹中 韓国経済はずっと波乱に満ちていました。第2次世界大戦後に朝鮮半島が分断され、アジアで最も貧しい地域の1つとなったんです。戦前・戦中に日本が朝鮮半島に建設した鉄工所、製鉄所、発電所などはほとんど北朝鮮が引き継いだため、過去のインフラを経済成長に活用できなかったというデメリットもあったんです。

 しかし、何とか努力して「韓江(漢江)の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げ、自国でオリンピックを開催するまでになった。ただし、その際にかなり「無理」をしていたんですね。力のある民間企業を助成して少しでも早く経済を発展させようとしたため、特定の企業に対する優遇措置を次々と行なったんです。

関連キーワード:構造改革 アジア

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執筆者プロフィル

写真:竹中平蔵

竹中平蔵
(慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長)

1951年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行に入行。ハーバード大学、ペンシルバニア大学客員研究員、大阪大学助教授、慶應義塾大学教授などを経て、01年より小泉内閣で金融担当大臣、経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣を歴任。04年から06年まで参議院議員。

写真:上田晋也

上田晋也
(タレント)

1970年生まれ。お笑いコンビ「くりぃむしちゅー」メンバー。早稲田大学教育学部中退。91年に有田哲平とコンビ結成。レギュラー出演番組多数。

この連載について

経済学者・竹中平蔵と、くりぃむしちゅーの上田晋也が、毎週楽しくわかりやすく日本の経済を解説。同名テレビ番組(BS朝日、朝日ニュースター)の一部を再構成してお届けします。

ソロス、サマーズ、マートンが語る金融危機と世界経済の行方