曲がったキュウリ、いびつなサツマイモ。東京都葛飾区のスーパー「石塚園」には、大手スーパーなどではお目にかかれない規格外の野菜が並ぶ。小さな傷があったり、不格好でも品質に問題はない。「曲がったキュウリの方が甘みがあっておいしい。お客さんの反応も上々」と、石塚茂幸社長は話す。真っすぐなミニキュウリは200グラム(5~6本)200円だが、曲がったものは300グラム(10本)148円という安値も人気の理由だ。
有機野菜のインターネット通販を手がけるオイシックス(東京都品川区)も規格外品を通常より2~3割安く売っている。ホームページには「ふぞろいになった理由」も掲載。規格外品の売り上げは03~07年度の5年間で7倍近くに伸びた。
選別は大きさや形をそろえ、市場で取引しやすくするのが目的。農林水産省は農家の選別コストを減らすため02年に規格を廃止したが、今も都道府県や農協が独自規格を設ける。公式の統計はないが、北関東のある選果場では入荷量の1%が捨てられているという。
流通・加工段階にも無駄はつきまとう。品ぞろえを重視するあまり、食品を過剰に仕入れる小売店。必要以上に短い消費・賞味期限。家庭や飲食店からも大量の調理くずや食べ残しが出る。農水省は05年度の食品廃棄物を約1900万トンと試算する。日本の年間コメ生産量の倍以上だ。
食料自給率の分母となる国民1人あたりの供給カロリー(05年度)は2573キロカロリーだが、実際に食べられたのは1851キロカロリー。供給の無駄を減らせば自給率は上がる。選別コストを省き価格を下げれば、安い輸入食品にも対抗できる。
無駄の多さが指摘されるコンビニ業界にも改革の機運はある。首都圏を中心に展開するスリーエフ(本社・横浜市)は、店舗に設置した情報システムで客足に影響する周辺の天気予報などを分析。発注の精度を上げ、ロスを抑えている。
世界で8億人が飢える中、大量の食料を捨て続ける日本人。足元を見つめ直す時期が来ている。=つづく
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■ことば
05年度で約1900万トンに上った食品廃棄物は、食品メーカーや流通、外食などの業界から出たものが約800万トン、家庭の食べ残しなどが約1100万トン。農水省は、このうち500万~900万トンがまだ食べられる食品だったと推計。有識者や食品関連業界の代表による検討会を設置し、消費・賞味期限の見直しなど改善策を検討している。
毎日新聞 2008年11月29日 東京朝刊
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