食料小国ニッポン

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食料小国ニッポン:自給率回復の道/2 減反水田で飼料米

 「コメを与えた豚の肉は脂身がうまいと評判です」。秋田県東部、十和田湖に面した小坂町の養豚業者、ポークランドグループの佐藤達也常務(40)は、そう胸を張る。今年は約2800頭分の肉を首都圏の生協を通じて販売し、好評を得た。

 飼料米は減反で休耕中の水田を活用し、近隣の農家が生産。同社はホームページで「自給の可能性に挑戦」と宣言している。

 青森県津軽地方。その中心部にある藤崎町で鶏卵を生産するトキワ養鶏も昨年は400羽、今年は約4000羽の鶏にコメを与えている。今年、契約農家が作付けした飼料米は約15ヘクタール。3年後には2000ヘクタールとする目標だ。常田憲幸広報室長(51)は「お金を出せば海外から餌を買える時代は終わった」と話す。

 畜産飼料の主原料となるトウモロコシは今年6月27日、シカゴ市場で1トン=297ドルの史上最高値をつけた。年間約1670万トンのトウモロコシを輸入する日本では、廃業に追い込まれる畜産農家が急増。農林水産省は対策に追われる半面、07年度で25%にとどまる飼料自給率を高める好機ととらえ、飼料米生産の助成を強化した。

 ただ、それでもポークランドが使うコメはトウモロコシ主体の配合飼料より1トンあたり約3000~4000円高く、豚肉の価格は通常商品を100グラムあたり10~40円上回る。トキワの卵も平飼い(地上で飼育)で1個100円もする。両社とも飼料米活用を増やす方針だが、コスト削減がネック。常田室長は「空いている農協のコメ貯蔵設備などを活用したい」と話す。

 コメ農家の収入確保も課題だ。ポークランドは1キロあたり60円程度で飼料米を買っているが、10アールあたり収量が600キロなら農家の手取りは約3万6000円。国の交付金4万円を加えても計約7万6000円で「あきたこまち」を作った場合の約11万7000円とは大きな差がある。

 地元農協は「生産調整(減反)面積にカウントされる飼料米は農家のメリットが大きい」と強調するが、すでにピークの半値に下がったトウモロコシに対抗するには、コスト削減や多収穫米の開発が急務となる。=つづく

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 ■ことば

 ◇飼料米

 豚、鶏、牛など家畜の飼料用に生産されるコメ。加工用として開発された多収穫品種などが利用されている。栄養価はトウモロコシとほぼ同じ。07年産の飼料米作付面積は約290ヘクタールだったが、08年産は1000ヘクタールを超える見通し。主食用ではないため、飼料米の作付けは生産調整(減反)にカウントされ、交付金の対象となる。

毎日新聞 2008年11月28日 東京朝刊

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