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妊婦搬送:総合周産期センター、平均200件は受け入れ不能--昨年度 /東京

 ◇9割、NICU満床--極低出生体重児が増え

 ハイリスクの妊婦に対応する都内の「総合周産期母子医療センター」(9カ所)が昨年度、妊婦の搬送を受け入れられなかった事例は1センター平均約200件に上り、その9割近くはNICU(新生児集中治療管理室)の満床が理由だったことが、都の調査で明らかになった。晩婚・晩産化などからNICUが不可欠な未熟児が増えたうえ、他県からの入院児も多く、首都の周産期医療の厳しい現状が改めて浮き彫りになった形だ。

 都内で今年9~10月、脳内出血の症状を訴えた妊婦の搬送を総合周産期センターなどが受け入れられなかった問題が相次いだことを受け、都福祉保健局が各総合周産期センターの搬送受け入れ状況(昨年度実績、速報値)などを調べた。

 その結果、妊婦の搬送の要請は9センターで延べ計2784件(一つのケースで複数のセンターが要請を受けた重複分も含む)あり、うち受け入れられなかったケースが1789件(64%)を占めた。受け入れ不能だった理由の内訳を数字で示したのは7センター(1408件)で「NICU(およびMFICU=母体・胎児集中治療管理室)が満床だったため」が1192件(85%)を占めた。

 残りの2センターも東邦大学医療センター大森病院(204件、大田区)が「おおむねNICU満床による」、日本赤十字社医療センター(177件、渋谷区)も「病床(NICUおよびMFICU)が満床の場合がほとんど」とコメント。合わせると妊婦搬送を受け入れられなかった事例の9割近くが、NICU不足によるものだったとみられる。

 ある総合周産期センターの責任者は毎日新聞の取材に「子どもが生まれそうな妊婦の搬送要請があった場合、母親のベッドは空いていてもNICUに空きがなければ普通は受け入れない。無理して受け入れても未熟児が生まれ、万一亡くなるような事態になれば、遺族から『なぜ受け入れたんだ』と訴えられることもありうる。だったら最初から受け入れない方がいい、ということになってしまう」と打ち明ける。

 都内のNICUが満床に近い状態が続いているのには、複数の事情もからんでいる。都周産期医療協議会(会長・岡井崇昭和大医学部教授)が3月にまとめた報告書によると、NICUが不可欠な極低出生体重児(1500グラム未満)は過去10年間で約1・3倍に増加。重い障害があって退院の見通しが立たない子も少なくない。

 また、NICUの整備にはベッドだけでなく、小児科医や看護師の配置も義務づけられているが、深刻な医師不足・看護師不足から整備が思うように進んでいない。都内には200床以上のNICUがあるものの、入院児のほぼ4分の1は他県に住所があるという。【須山勉】

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 ■ことば

 ◇NICU(新生児集中治療管理室)

 24時間体制で集中治療が必要な未熟児などに対応する保育器や人工呼吸器などを備えた場所。都内には計219床(今年4月現在)ある。

〔都内版〕

毎日新聞 2008年12月6日 地方版

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