カラフルな描写によって人間を変容させる力!といえば、一番に私が思い出すのは、ルドルフ・シュタイナーです。その仕事があまりにも広範囲にわたって包括的であるが故に、(そして頭がよすぎるゆえの即断も多少あるかもしれませんが)、なかなか理解されない思想家です。
シュタイナーはその思想を伝えるために、たくさんの講義を行い、そして講義においてカラフルな黒板絵を用いました。彼の主要著作はちくま学芸文庫に入っています。その表紙には、彼の黒板絵が使われています。黒板絵が的確に彼の講義内容を表し、そして、チョークで書かれたのにもかかわらず美しいからです。
黒板絵と同系統の実践は、シュタイナー教育(これは俗称で、正式には、ウォルドルフ教育、などといいます)でも実践されています。ここでは、自らの学習の基盤となるノート&教科書を、クレヨンなどで作成するのです。工芸、絵画、大工仕事、工作などにも力を入れている学校です。こうした試みは、障害児や不登校児のための学校のように誤解するかもしれませんが、そうではなく、全人的な人格育成の一環として、絵画もノート作りもつながっているのです。
ちょっと話が脱線しましたが、是非シュタイナーの黒板絵(『残された黒板絵』、『100冊のノート』など)をごらんになってください。聞くところによると、パウル・クレーなどの画家もシュタイナーの講義に出て、思想と黒板絵に大いに触発されて創造活動を進めたとのこと。
クレヨンでノートをとる、なんて、信じられないでしょう。細く書きたいから、細いペンや細いシャープペンを使って、繊細な線を書くのに。クレヨンのような太さはノートのような記述には向かないと。また、クレヨンなんて子供の使うものと思う方もおられるかもしれません。これは的を得ているのかも。子供の意識状態に回帰するために、クレヨンを握ってみること、時に聞き手と反対側の手に握ってみることは、きわめて深いレベルに到達する刺激をもたらしてくれるかもしれません。……すくなくとも、12ステップの棚卸し表が、頭で理解しうる理性レベルでしか働かないなどと、お考えではないでしょう?
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