2008.12.01

マインドマップ

 もう一つ、カラフルな図示を重視する文化の一つに、マインドマップがあります。

中心にメインテーマを、そこから縦横に広がる枝に派生物を配置していく描画法ですが、その際、積極的に絵や色を使うことを進められます。これは、参考書も最近はたくさん邦訳されていて、講習を受ける機会などもあるようです。

 私はあまりゆっくりとカラフルにマインドマップを彩る余裕がないことが多いので、もっぱらブルーブラックで書きためているものに、必要に応じてマーカーや赤ペンを入れていく感じなのですが、講演などを行う場合に、箇条書きのレジュメよりもずっと構成(や構成の入れ替え、それによる時間調整)が楽になったことを、書き添えておきましょう。そして、色を使うことで、マインドマップに転記した内容がとても覚えやすかったことも。

 カラフルな表のちからを表す一例でした。

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シュタイナーの黒板絵

 カラフルな描写によって人間を変容させる力!といえば、一番に私が思い出すのは、ルドルフ・シュタイナーです。その仕事があまりにも広範囲にわたって包括的であるが故に、(そして頭がよすぎるゆえの即断も多少あるかもしれませんが)、なかなか理解されない思想家です。

 シュタイナーはその思想を伝えるために、たくさんの講義を行い、そして講義においてカラフルな黒板絵を用いました。彼の主要著作はちくま学芸文庫に入っています。その表紙には、彼の黒板絵が使われています。黒板絵が的確に彼の講義内容を表し、そして、チョークで書かれたのにもかかわらず美しいからです。

 黒板絵と同系統の実践は、シュタイナー教育(これは俗称で、正式には、ウォルドルフ教育、などといいます)でも実践されています。ここでは、自らの学習の基盤となるノート&教科書を、クレヨンなどで作成するのです。工芸、絵画、大工仕事、工作などにも力を入れている学校です。こうした試みは、障害児や不登校児のための学校のように誤解するかもしれませんが、そうではなく、全人的な人格育成の一環として、絵画もノート作りもつながっているのです。

 ちょっと話が脱線しましたが、是非シュタイナーの黒板絵(『残された黒板絵』、『100冊のノート』など)をごらんになってください。聞くところによると、パウル・クレーなどの画家もシュタイナーの講義に出て、思想と黒板絵に大いに触発されて創造活動を進めたとのこと。
 クレヨンでノートをとる、なんて、信じられないでしょう。細く書きたいから、細いペンや細いシャープペンを使って、繊細な線を書くのに。クレヨンのような太さはノートのような記述には向かないと。また、クレヨンなんて子供の使うものと思う方もおられるかもしれません。これは的を得ているのかも。子供の意識状態に回帰するために、クレヨンを握ってみること、時に聞き手と反対側の手に握ってみることは、きわめて深いレベルに到達する刺激をもたらしてくれるかもしれません。……すくなくとも、12ステップの棚卸し表が、頭で理解しうる理性レベルでしか働かないなどと、お考えではないでしょう?

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マンダラを彩る

依存症からの回復研究会では、古今東西のマンダラを例に取り上げ、あの心理学者ユングもマンダラを書きながら自分をいやしていったことを例に取り上げました。そして、マンダラぬりえというのがありますので是非ごらんになってください、と、紹介しました。
 日本では、立川武蔵先生や正木晃先生などが、マンダラぬりえの本を出版されています。
これは欧米圏でも関心を持たれている活動で、たとえば、Johannes Rosengarten, Mandalas: Zeit und Traumenなどはそうした例でしょう。

マンダラは、天台や真言の仏教寺院に行けば、様々なマンダラをみることができます。
しかし、12ステップを学ぶ人に縁が深いのはユングの描いたマンダラでしょう。たとえば、大型本ですが、
アニエラ・ヤッフェの『ユング--そのイメージとことば』には、彼が『危機の時代』に描いたいくつものマンダラが出てきます。

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棚卸し表のルーツ

棚卸し表のルーツと考えられるのは、アメリカの偉人、ベンジャミン・フランクリンだ。
彼は、合衆国憲法に署名した一人であるし、
雷放電を凧でとらえようとした科学者であり、
また、現在の図書館と読書クラブを併せたような組織を発案した文化人であり、
人生の目標に沿って勤勉な生き方を継続したとして尊敬される人でもある。

 この最後の点については、彼の名を取って、『フランクリン・プランナー』という手帳が作られたぐらいだ。
 
 フランクリンは、その自伝(『フランクリン自伝』)において、13の人生の目標(徳目)を実践できたかどうかをチェックする表を紹介している。彼自身が用いて成功を成し遂げたとするその表の話は大変有名で、社会学者マックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で、資本主義を作り上げたベーシックな経済観を支える事例として紹介しているし、日本でも救世軍の指導者山室軍平がフランクリンの表(および道教に基づいた功過録と呼ばれる同様の表)によって自らを律しようとしたことが知られている。

 これらと比較して、近年12ステップ系の自助団体のメンバーが用いている棚卸し表は、心理学的な様々な理論を踏まえて『バージョンアップ』されたものである。

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棚卸し表とは?

 棚卸し表とは?
 よく商売に関わる人が使うのは、店舗の在庫などを管理する棚卸しである。
店にある在庫と、売上伝票の数字が一致しないということは、よくある。
在庫が何かの理由でなくなっているかもしれないし、レジで打ち忘れているということもあるかもしれない。
人間も同じだ。

 本人がこうだと思っている状態と、実際の本人の状態とがずれていれば、
人生を生きていくのは難しくなる。
あるいは、やることが多すぎて、何をやったらいいかわからずパニックになる、ということはよくある。
たくさんの相手に借金をしすぎているひとは、いったい自分の借金の総額がどのくらいかわからず、また、総額を認識することも怖いと思うかもしれない。

 飲酒に関わる諸問題を終わらせようと思っている断酒自助会Alcoholics Anonymousのメンバーが編み出した方法が、この棚卸し表を、心の問題に対応させたもの(moral inventory)だ。そしてこれは、アルコール以外の問題を持っている人にとっても、役に立つものだ。

 棚卸し表やその背景の情報については、第一に、Alcoholics Anonymousの本をお薦めする。
アルコホーリクス・アノニマス日本ゼネラルサービスオフィスのサイト
棚卸し表は一人でやるものではない、と、よく言われる。AAでは、ミーティングで出会った仲間、スポンサーと一緒に取り組むことが進められる。それで、ミーティングなども含めた、AAの実際の活動についての幅広い情報があるこのサイトを勧めたい。
 なおゼネラルサービスオフィスからは、『アルコホーリクス・アノニマス--無名のアルコール依存症者たち』を購入できる。この中にも非常にシンプルな形での棚卸し表の実例がある。 

 ネット上でフレンドリーかつていねいにまとまっている情報源として、ひいらぎさんのサイト 心の家路 Homeward Journey of Spirit ~アルコール依存症からの回復と自助グループの勧め~ がある。これは一メンバーの視点から、丁寧に考察して書かれた味わいのある文章が集められている。

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七色の棚卸し表

11月29日、横浜で行われた、依存症からの回復研究集会(第二回)にて、棚卸し表をもっとカラフルにしてはどうかというアイディアを提案させていただいた。

 よく出回っている棚卸し表は、ほとんど白黒だ。白黒では、私たちのイマジネーションも広がらないだろうし、暗い気持ちの時にはますます暗い方に引っ張られてしまうかもしれない。色鮮やかなイラストやシールで飾ったり、棚卸し表にカラフルに囲んで、表が美しいグラデーションを作るようにしたり、表が電光掲示板のように文字をなすように塗り上げたりしてみてはどうだろうか。
 色は感情とイマジネーションを触発するかもしれない。私自身の経験では、少なくとも記憶にはよく残るようになる。
 棚卸し表をもっと生かそうと思っている人にとって、思いがけない効能もあるかもしれない!

 

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