訃報:「日本文学史序説」加藤周一さん死去=89歳

加藤周一 評論家=2007年3月6日、塩入正夫撮影
加藤周一 評論家=2007年3月6日、塩入正夫撮影

 戦後を代表する知識人の一人で、芸術から時事問題までリベラルな立場から幅広く発言してきた評論家、作家の加藤周一(かとう・しゅういち)さんが5日午後2時、東京都内の病院で死去した。89歳。

 加藤さんは東京都出身。旧制一高時代、後に小説家となる故中村真一郎、故福永武彦らと知り合う。東大医学部卒。47年、共著のエッセー集「1946 文学的考察」で文壇に登場。長編「ある晴れた日に」などで小説家としても名をなした。55年、評論「日本文化の雑種性」を発表。論壇で注目された。

 文学研究では、思想書から大衆文学にまで目配りした「日本文学史序説」で80年に大佛次郎賞。同書は英、仏、伊語などに訳された。ほかに「羊の歌」「二〇世紀の自画像」など。海外の大学のほか、上智大、立命館大で国文学などを教え、東京都立中央図書館長も務めた。

 晩年は「九条の会」呼びかけ人として、憲法改正反対を訴えた。00年に仏政府からレジオン・ドヌール勲章。渋沢クローデル賞現代フランス・エッセー賞の選考委員も務めた。

毎日新聞 2008年12月6日 1時16分(最終更新 12月6日 1時27分)

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