モルモン教とニュースキンとの関連を示す記事記事を紹介します。1993年4月6日号のAERA(アエラ)によるものです。同誌はニュースキン来日当初からモルモン教と同社との深い関係を指摘していました。
「いまのうちにやり始めれば、大儲けできるよ」米国生まれビジネスの、おいしい話がささやかれている。自分だけが儲かると信じ、伝言ゲームが広がる。(編集部 尾木和晴 )
東京・六本木にほど近い大通りに面した事務所。ガラス扉には黒いフィルムが貼ってあり、中を覗くことはできない。一見すると、ゲーム機とばくをやっていそうなスナックという感じだ。入り口には、「会員制」「関係者以外の出入りを禁ず」と書いてある。この事務所のことを、「第二のアムウェイ」といわれるネットワーク・ビジネス「ニュースキン」の秘密販売代理店ですよ、と教えてくれた人がいた。しかし、ニュースキン日本支社(東京・港区)は、無関係と強調する。「この事務所に集まる人たちは、代理店のように称して、いろんな人から一万円の会費を徴収し、販売員になることを勧めている。こちらの警告に対しても、業務をやめようとしない。現在、法的手段も検討中だ」だが、この事務所の責任者は、顧問弁護士を通じて、「ニュースキンに限らず、同じような商法の情報を会員に提供しているだけ。代理店と称したり、販売員の勧誘などは一切、行っていない」と否定している。ニュースキンが、日本に支社を置いたのは昨年三月。まだ営業は始めていない。開業もしていないのに、販売員を集めるのは、同社の規約に抵触する。だが、同社によると、「ニュースキン」の代理店と称した、秘密クラブのような組織はすでに、都内にいくつもあるという。「いまから準備すれば、オープンしたときに、組織の上に立つことができ、莫大な収入になる」という「おいしい話」が、口コミで伝言ゲームのようにささやかれているのだ。
モルモン教徒が多いアムウェイ型ビジネスニュースキンは、女性用の化粧品、石鹸などの商品を、販売員を使って直接販売する会社で、米ユタ州に本社がある。一九八四年設立。十年目にして、五億ドル(約六百億円)の売り上げがあるネットワーク・ビジネスのひとつだ。社長をはじめ社員の八割が、モルモン教徒というのも大きな特色である。販売員は売った商品の価格と、仕入れ値との差額が収入になる。商品にはポイントがついていて、これを増やすと、会社からボーナスが出る。さらに自分が増やした販売員のグループ全体の売り上げに比例したボーナスも入る。友人、知人ルートの無店舗販売で、鍋や洗剤、化粧品を売りさばき、またたく間に、日本での年商が一千億円を突破したアムウェイとよく似た商法である。おいしい話と感じる点は、販売価格は自由に決めることができ、グループ全体に対するボーナスがアムウェイよりもいいことだ。「いま会員と称しても、開業後、販売員としての利点はない」と、日本支社では強調する。そうはいっても、伝言ゲームの勢いはおさまる様子はない。
○カナダから駆けつけ月収百万円をめざす都内に二月から住んでいる、かおる・カナバーさん(四一)は、嫁ぎ先のカナダから一時帰国した。カナダで副業で販売員をしていたが、日本で開業すると聞いて、建築関係の仕事を辞めて戻ってきた。夫はカナダに残ったままだ。「ニュースキンは品質が良く、利益率も高い。最初にこれを知ったとき、『あっ、これだ』と感じました。外国人が日本で売るより、日本人のほうが売りやすいと思い、一年間は滞在するつもり。月収百万円をめざしたい」都内で衣料品販売業を経営している女性(四三)は、昨年から販売員を集めている。表立って動くことを禁じられているのはわかっている。商品を米国の友人を通じて輸入し、友人や親戚に口コミだけで伝えている。日本支社が開業すると同時に、販売員として自分の組織をつくるためだ。「アムウェイは十年前から知っていましたが、一生懸命にやりませんでした。最近、当時の知人が成功して月収数百万円と聞いて、くやしいと思ってました。そんなとき、ニュースキンを知ったのです。三年間で月収百万円といきたいですが、これじゃおもしろくない。二百万円はほしいですね」一方、販売員の勧誘を受けている都内の自営業者(三九)は、「ロサンゼルスの日系人に誘われて困っている。マルチ商法まがいのことはできない。自分の力で儲かるというのなら、友人を巻き込まないでやればいいのに」と、困惑しきった表情だ。日本で口コミが広がり始めたのは一昨年の暮れから。日本開業が計画されたとたん、米国から大挙して販売員が来日した。当時の規約では、他国での商売は許されていた。だが、開業の遅れで、米国本社へ不満が集中した。このため、有力販売員と本社間で昨年十月、進出を決めた国での事前勧誘や販売の禁止を申し合わせた。この規約に反した米国人販売員の登録を抹消した例もあるという。現在、日本で会員の勧誘や商品の販売をしている者は、いずれも規約違反、と日本支社は警告している。
○日本市場を食い荒らす米国落下傘部隊が暗躍ニュースキンに興味を示すのは、アムウェイでは出遅れがたたって、うまくいかなかった人が多い。このビジネスは、開業してすぐに始めたほうが、圧倒的に有利だということを体験的に知っているからだ。日本アムウェイ(本社・東京)では、「ニュースキンは脅威とは思っていない」と、余裕の構えだ。アムウェイの昨年度の売り上げが約千二百億円。奇跡といわれる急成長を果たした。だが、販売員にとって現実は、一攫千金とはいかなかったようだ。アムウェイに約百十三万人いる販売員のうち、九〇%以上は、年収が二十万円に満たない。ニュースキン販売員の平均月収も、四百四十二ドル(約五万千円)にすぎない。だれもが、儲かるわけではない。それでも密かに販売員を集め、自分の組織を作ろうと画策するのは、ニュースキンが台湾、香港(ホンコン)への進出時に行った、「パラシュート・オペレーション(落下傘部隊作戦)」という前例があるためだ。日本支社によると、昨年九月の香港、今年一月の台湾での開業前、本社は、米国内で有力な販売員グループを送り込んだという。事前に組織作りが終わった時点で、オープンする。その後、現地の人が販売員になっても、有力グループの傘下に入らなければならず、儲けは有力グループに入るという仕掛けである。このグループが昨年から日本に上陸、「ミーティング・パック」と称して、日本人をサイパンやグアムに団体で連れてゆき、勧誘をしているという噂まで流れている。もっとも、米国本社は、「そういった作戦は行っていない」と否定している。水面下で、「自分の組織作り」が広がっているのは、有力グループが支配する前に、自分のグループを作ってしまおうとしているためだ。本社の否定を疑問視するのは、販売員をめざす一般の人ばかりではない。日本支社のある社員は、「本社幹部と有力な販売員グループは密接な関係にある。いくら本社が否定しても、有力グループが現在、日本で活動していないとは断言できない」と、微妙な言い回しをする。いずれにせよ日本支社の開業は、「まだ支社長も決まっていない状態。何とか夏までには、オープンにこぎつけたい」(日本支社の池沢祐子氏)開業時には、販売員の登録を求める人が数千人規模で、日本支社に殺到すると予想されるという。
○会社は確実に儲かり、わずかな人が成功するアムウェイで証明されたように、こうした商法で成功できるのはごく一部。わかっていながら、知人や親戚までも巻き込んで販売員を広げ、商品を売っていく商法になぜ、魅せられてしまうのだろうか。ニュースキンの日本支社長としてヘッドハンティングされ、断ったというアムウェイの元幹部は、こう指摘している。「アムウェイが十四年前、日本に進出したときと同じ状況ですね。ニュースキンは、より儲け第一主義なので、アムウェイ以上に強引に人を集めていくでしょう。特に、いまは景気が悪いため、副業にと考える人が多い。過熱するのはわかる。だが、この商法は会社だけが儲かるシステムなのです。それをわかったうえで、始めてほしい」アムウェイが日本で成功した原因の一つは、アメリカ人とパーティーをして肩を組んだり、抱き合ったりして、一体感を高めたことにある。これは、日本人の中にある舶来崇拝主義を微妙に刺激する戦略だったという。ニュースキンだけでなく、米国から、「メリー・ケイ」(化粧品)、「サン・ライダー」(健康食品)といった会社が上陸の機会を虎視眈々と狙っている。本格的な戦いはこれから始まる。
●本社が販売員を管理できないスティーブン・J・ランド米国本社副社長に聞く日本で開業する前に、販売員の勧誘や商品の販売が行われているのは知っています。日本で実際に販売している場所も確認しています。規約で事前の販売を禁止していますが、昨年十月からは販売員の事前勧誘も禁じています。これは「パラシュート・オペレーション」を行っているのではありません。米国やカナダなどの国の販売員が日本市場に興味を持つ一方で、本社が世界中で約十六万人いる販売員をコントロールできなくなっているからです。現在、問題のある販売員に警告書を送ったり、再教育などの対策を行っている最中です。販売をやめさせるために懲戒処分も検討しています。社長以下、社員にモルモン教徒が多いのも事実です。それはモルモン教徒の本拠地、ユタ州で事業を始めたからです。米国にはモルモン教徒の社長で成功している例が数多くあります。こうした会社が教会と関係ないように、当社も教会とは関係ありません。米国でヒットした理由は、まず品質が評価されたことです。アムウェイの商品を見下すわけではありませんが、世界一の商品と自負しています。次に少額の資金でも、ビジネスを始めることができます。さらに、アムウェイ以上に、販売員に対するコミッションが高いのも大きな理由でしょう。
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