2008年12月 5日 (金)

合気道の技法体系についてちょこっと

complex_catさんのコメントInterdisciplinary: 正面打ち技法のはなしと中国武術との論理的繋がりについて、みたいな#comment-53835544(なんかプロパティが変だ…)へのレス。

八卦掌は、よく出てきますですね。私も知識は全然持っていませんが、比較されているのは結構目にします。

武器を持っている敵多人数を想定して体系が構成される、というのを考えると、多分収斂していくのだと思います。それで、より重要な部分とされる点が対象化されて、それが具体的な型や稽古法に反映される、という事ですね。

そういう観点だと、合気道というのは、相手が太刀か短剣を持っているのを体術でも絶対想定しているので(柔術は須らくそうあるべきと思いますし、実際そうなっているのでしょうけれど)、そういう所が意識化されて体系が創られてきたのだろうな、と。

後は、打撃技か組技のどちらを主体的に用いるか、というのも関係してくると思います。当身をよく用いる柔術の技法に関しては全然知らないのですが、たとえば柳生心眼流などは、また独特のシステムを持っているのかも知れません。

合気道では、身体の練りや体捌きは、ほぼ必ず技法に組み込まれているように思いますが、必ずしも受けと取りで型を行うのでは無く、一人で練られるように武器技の体系も工夫されていますね。2人型というのは、相手を制するという部分に意識を取られる場合があるので、意識を自身の身体に向けて練るという意味でも、武器技は重要です。

たとえば、剣素振り7本、杖素振り20本、という素振りがあり、それを基本とした型(組太刀・組杖・剣対杖)がいくつかある、という体系ですね。

呼吸法に関して。

合気道での「呼吸法」の用い方は、独特ですよね。おそらくすぐにイメージされるような調息法のようなものでは無くて、崩す技法そのものを指します。かたちとしては、大東流における「合気上げ」と同質ですね。※色んな方向けの余談。合気系の方からは異論もあるかも知れないですが、掴ませた所から崩すという課題があって、それを実現させる身体運用を身に着ける、という目的に向けて工夫したら、高級になると収斂する訳なので、ほぼ同じと言って良いです。ちなみに、合気道は必ず「掴ませつつ」、「完全に掴ませないように導いて」という見方があるとしたら、それは間違い。下動画参考

呼吸力を発揮して相手を崩す技法、という事でそう呼んでいるのだとは思いますが、残念ながら由来は知りません。

という訳で、百文字は一動画に如かず、なので、動画です。

最初の方をご覧頂くと解るように、崩す技そのものを「呼吸法」と言うのですね。一般的で無い用い方なので、これは結構紛らわしいのかも。合気道では、掴まれた場合、呼吸法を用いて崩して技を掛ける、という考え方をする訳ですね。※腕のかたちの事を指す場合もありますし、気の流れの時も当然用いられるので、もうちょい概念は広いです

斉藤先生は、多分合気道以外の方にはそんなに知られてはいないと思うので、時折紹介しています。こういうスタイルがあるというのもあまり知られていないでしょうから、それについても知って頂きたいな、と。

合気道の技法体系とその機能について、まとめて書いてみるのも面白そうですね。

参考動画。

斉藤仁弘先生(斉藤守弘先生のご子息です)による、呼吸法と呼吸投げ。

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2008年12月 4日 (木)

信じて無いのにネタにする人ってホントにいるの?

はてなブックマーク - 10位までに血液型本4冊…書籍の年間ベストセラー(読売新聞) - Yahoo!ニュース

umaaaa これマジにとって「血液型なんて嘘っぱちだってば!」とか怒る人を見ると、皆わかってるから大丈夫だよーって慰めてあげたくなる。本気で信じてる人見たことないや/いるとこにはいるのですね、決め付けて申し訳ない 2008/12/03

このコメントを読んで、いつも考えている事を書いてみようと思いました。

umaaaaさんは、本気で信じている人を見た事が無い、と最初仰った訳ですね(ブクマコメントで指摘があって、後で後半部が追加されました)。

私はそれとは全く逆で、血液型性格判断をネタにしている人で、信じていない人を見た事が無いです。十数人はいたかな。もっといたかも。

ちょっと考えてみて、こういうネタを、間違いと完全に解りつつ使うなんてあり得るのか? と感じる訳ですね。

間違いだと解ってても場の雰囲気を壊したく無いから仕方無く乗っかる、というのはあり得ると思うのです。が、それは、間違いだと解っててネタにする、というのとは、ちと違いますよね?

ネタにするって事は、少なからず信じている、自分の経験から「ありそうだ」と思っている、という事なんじゃないのかなあ、と。たとえ言葉の上では「間違いだと解ってるよ」的な言い方をしたとしても、実は信じているんじゃないの、とか。

間違いと解りつつ積極的に用いるって事は、端的に言って嘘つきな訳で。仮に、皆が間違いと解っててネタにしてるんだとしたら、それはそれでどうなのよ、とも思いますね。

よーく考えてみて下さい。

他人とコミュニケーションをとる際に、「間違いだと解りつつも、やり取りが円滑に進むからネタにする」、なんて事、普通します? 無いですよね。せいぜい、後でネタばらしをして驚かせる、という時にやるくらいでは?

なのに、血液型性格判断に関しては、時折そういう意見が見られます。なんででしょうね。

あー、占いとか、自分は信じていないけど信じている人を喜ばせる、とかありそうだな…。

どっちにしても、間違いだと解ってて使う、という人は嫌ですね。もちろん、本当だと信じて使う人も嫌ですが。

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ノート:心理学研究法(4)

第3章の続き。

§2 面接法

▼面接法とは

面接法――一定の環境において研究者が研究対象者と対面し、相互的コミュニケーションを通して情報を収集する方法。

利点

  • 対象者の内的世界を把握するのに優れている。
  • 対象者の表現に対してその場で介入出来るため、複雑な内容であっても研究者が求めているテーマに合わせて系統的にデータを収集できる。

→対象となっている人々の主観的体験を背景を含めて把握するのを目的とする質的調査に適した方法。

その一方、研究者と対象者の相互作用によって成立するものだから、研究者の影響が及びやすい。たとえば、

  • 対象者が研究者の期待を察知し、それに合った返答をしてしまう。
  • 親しさや信頼感などによって面接で語られる内容が変わってくる。

面接では、言語的コミュニケーションだけで無く非言語的コミュニケーションが交されるので、研究者には、相手の表情や身振りなどを観察し、非言語情報を的確に把握する技能も必要とされる。バーバル・コミュニケーションとノン・バーバル・コミュニケーション(NVC)。

▼構造化面接・半構造化面接・非構造化面接

面接法は、「研究者が対象者に質問する項目がどの程度決定されているか」、つまり、「そこで行われる面接の構造が事前にどの程度限定されているか」によって、構造化面接半構造化面接非構造化面接に分けられる。

構造化の程度によって、会話の自由度が異なってくる。

  • 構造化面接――事前に質問すべき項目が準備。研究者は、それを逐一質問して目標とするデータを系統的に収集。
  • 非構造化面接――質問する内容や目標とする回答をあらかじめ予想。質問項目のような明確な形態はとらず、会話の流れに応じて自ずと面接の目標に関連した内容が語られるように面接の進行を企てる。
  • 半構造化面接――構造化面接と非構造化面接の中間。あらかじめ質問項目は準備しておくが、会話の流れに応じて質問を変えたり追加したりして、目標とする情報を収集。

目的による分類

  • 調査面接――調査目的に合致した情報の収集のための面接。構造化面接や半構造化面接が主に採用される。
  • 相談面接――対象者の心理援助を目的とした面接。対象者の自発的な語りを共感的に聴く事が重視される。非構造化面接が採用される場合が多い。

調査か臨床か

  • 質的調査――調査面接
  • 臨床面接(臨床心理学の実践技法)――調査面接の一種である査定面接→相談面接(第13章で解説)

対象者に人数による分類

  • 個人面接
  • 集団面接

§3 観察法

▼観察法とは

観察法――対象の行動を注意深く見る事によって対象を理解する研究法。

分類

  • 観察事態
    • 自然観察法――条件を統制しない日常場面において、対象の行動をありのままに観察。複雑な事象をコンテクストを含めて把握出来る所が利点。
      • 日常的観察――日常生活の中で偶然に遭遇した出来事を記録。
      • 組織的観察――研究目的に沿ってあらかじめ観察単位をサンプリングし、それに絞って観察を行う方法(ただ単に対象を観察するだけで、状況を全て適確に観察するのは不可能に近い)。
        • 時間見本法――観察単位:時間
        • 場面見本法――観察単位:観察場面
        • 事象見本法――観察単位:観察する事象や行動
    • 実験観察法――ある行動に影響すると思われる条件(独立変数)を系統的に変化させ、行動や内的状態(従属変数)の変化を観察・測定し、条件と行動との因果関係を調べる。第10章で解説。
  • 観察形態
    • 参加観察――研究者が観察対象になる人々と関わりながら観察
      • 交流的観察――現実場面で観察対象と交流しつつ観察
      • 面接観察――面接場面で観察
    • 非参加観察
      • 直接観察――観察者が状況に入り込んで観察
        • 長所:観察者が様々な視点から観察出来るため、対象の状況を生き生きと、多元的に把握出来る。
        • 短所:観察者効果を及ぼし得るので、完全に自然な観察とは言えない部分も出てくる。
      • 間接観察――ビデオ等の観察装置を通して観察
        • 長所:観察者効果が弱い。
        • 短所:観察の視点が限定され、現象の一側面しか把握出来ない。

参考書では、表は大まかな分類しか書かれていませんが、細かい分類もすぐ把握出来るように、全部表に組み込んでみました。

§4 フィールドワーク

▼フィールドワークとは

フィールドワーク――研究者自らが、研究の対象となっている出来事や現象が起きている現場(フィールド)に出向き、その場で観察しながら対象となっている出来事や現象が生じる過程を調査する方法。

ただ単に研究対象の出来事や事象が生起する現場に身を置いてデータを収集すれば良いのでは無い。以下の手続きが必要(第5章で具体例とともに解説)。

  1. 参加観察
    • 研究者自身が調査対象となっている社会集団の生活に参加。
    • その一員として集団内部から対象を観察したり、内部の一員としての体験を記録。
    • そこで生起する事象を多角的に長期にわたって観察。
  2. 循環的な仮説(モデル)生成過程
    • 大まかな研究関心を決定
    • 探察的リサーチ・クエスチョンを設定
    • 初期データの収集・解釈
    • リサーチ・クエスチョンの練り直し
    • 追加データの収集と解釈
    • 追加データに基づいて仮説の修正と精緻化を繰り返してモデルを生成
  3. マルチメソッド
    • 質的調査――研究対象の出来事や事象が生じている状況を全体として把握する事が目指される。
    • →様々なデータ収集の方法(マルチメソッド)の中から研究対象となっている事象や要因に合わせて適切なデータ収集法を選択し、組み合わせる事で対象理解を試みる。
    • 参加観察が中核をなす。

§5 おわりに

  • 質的研究法は、量的研究法に比較すると新しい方法に基づくもの。
  • 様々なタイプの研究法が提案され発展しつつある段階。
  • 共通した研究方法や評価基準が最終的に確定されている訳では無い。
  • 未確立な点はあるが、心理学研究の可能性を広げる方法として、今後の発展が大いに期待。

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2008年12月 3日 (水)

finalventさんへ

偽科学発見テスト - finalventの日記

Sundalandさんとやり取りが続いているようですが。

早く続きを書きませんか?

コメントがきたら返答する、というのでは無くて。

主張を明確にし、論理構成を詳らかにして、その認識を持つに至った論拠を示してはくれませんか?

まさか、コメント欄でのやり取りがその役割を果たしている、なんて話では無いでしょう。

せめて、いつ頃書くとか、そういう見通しだけでも知らせた方が、読者に対して親切ではありませんか?

finalventさんがどういう説を持っておられるか、興味がある人間は、私も含めて少なからずいると思います。

当然、フェードアウトする事はあり得ないでしょうから、どうぞ、ご説明をお願いいたします。

いや、別に打ち切っても、それはそれで構わない訳ですが、それでしたら、その旨アナウンスするべきですよね。

なにしろ、テストを出されて、その解答編を待っている、という状況なのです。いずれにしても、何らかのアナウンスはした方がよろしいかと思います。既に出題から2週間経っているのです。さすがに悠長に過ぎるでしょう。

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